ボタンはオーダースーツのアクセサリー!しっかりと考えて選んで
監修:杉原一臣(新宿南口店 エリアマネージャー) / 投稿日時:2018.08.06 17:45:28
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ビジネスで力が入る「ここぞ!」というシーンでは、印象的なスーツスタイルで挑みたいもの。実は同じスーツであってもボタンが違えば印象がガラリと変わることをご存じでしょうか。ボタンひとつで、スーツの見ためをグレードアップさせることも、個性を引き立てることもできるのです。
そこでおすすめなのがオーダースーツです。自分好みの生地と、それをさらに生かすボタンを組み合わせ、ジャストフィットに仕立てたスーツは、このうえない自信を与えてくれるでしょう。今回は、スーツのボタンにはどのような種類があるのか、またそれらがどのようにスーツの印象を左右するのかをご紹介していきます。
どのボタンを選ぶのかによってスーツの雰囲気は変わる?
「ボタンはスーツのアクセサリー」とはいいますが、ボタンによってスーツの印象がどのように変わるのかを下の表で確認してみましょう。
ボタンの種類をご紹介
ボタンの種類とその特徴
「ナットボタン」
ナットボタンは、南米エクアドルのタグワ椰子の実が原料です。実の中は象牙のような乳白色で、アイボリーナットと呼ばれています。染色できるほか、経年変化を楽しめるのが特徴です。ネイビーのスーツとの相性がよく、シックで上品な雰囲気を演出することができます。
「貝ボタン」
貝ボタンの原料には白蝶貝、黒蝶貝、高瀬貝、アワビなどがあり、光の加減で変わる美しい表情が特徴です。特に真珠母貝から作られる白蝶貝は希少であり、別格の輝きを放ちます。ドレッシーな趣のある貝ボタンはシャツやドレスなどで使われること多いですが、大きめのボタンであればスーツにも使用できます。涼しげな見ためであることから、麻素材にもよく映えます。
「水牛ボタン」
水牛ボタンは、本水牛の角が原材料です。天然素材のボタンのなかでも高級素材にあたり、高級既製服にも多く使用されています。色は水牛の種類によって異なり、透明感のあるベージュはもっとも高級で、茶色、黒と色が濃くなるにつれて価格が安くなっていきます。重厚で高級感に満ちた見ためは、ウール素材のスーツによく合います。
「プラスチックボタン」
プラスチックボタンの原料には、ポリエステル、ユリア、ナイロンなどが使われます。ポリエステルは水牛や貝などの質感を再現するのが得意で、1950年代後半から天然素材の代用品として使われてきました。ユリアも水牛やナットの再現性に優れており、耐衝撃性や耐熱性も抜群です。
プラスチックボタンは硬くて丈夫であり、加工の技術も上がっているため一概に天然素材と比べてどちが良いとはいえませんが、風合いはやはり天然素材には劣ります。
ジャケットのボタンの数でスタイルは変わる
シングルスーツとダブルスーツとでは印象が異なるように、ボタンの数によっても雰囲気は変わってきます。では、具体的にどのような印象になるのかを説明していきましょう。
「シングルの場合」
シングルスーツはビジネス用であれば2つか3つボタンが定番です。2つボタンはVゾーンが深くなるため、縦ラインを強調しスマートですっきりした印象になります。3つボタンは2つボタンと比較するとVゾーンが狭くきちんとした印象になり、誠実さや真面目さを演出したい場合などには効果的です。ただ2000年代に入ってからは2つボタンが主流になってきています。仕事で日常的に着用するならば2つボタンを選択するのが無難でしょう。
「ダブルの場合」
ダブルスーツは重厚でクラシカルな雰囲気を演出することができます。バブル時代にはゆったりしたシルエットのダブルスーツが大流行しましたが、近年は体にフィットするタイトなシルエットが主流で、若い人を中心に人気が再燃しています。ボタンが4つの場合はVゾーンが深くなるのでシャープな印象に、6つの場合はVゾーンが狭くなるのでさらにクラシカルできちんとした印象になります。
ボタンの留め方
ボタンには正しい留め方があります。間違った着こなし方をして恥をかかないよう、しっかり押さえておきましょう。
「シングル 2つボタン」
上のボタンだけを留めて、下のボタンは外します。2つとも留めるのはマナー違反になり、「スーツの着こなしを知らない人」と思われてしまいますので気をつけてください。
「シングル 3つボタン」
3つボタンの場合は、上と真ん中のボタンを留め、一番下のボタンは外します。一番上のボタンが衿(ラペル)に隠れているデザインのジャケットであれば、真ん中のボタンのみ留めます。
「ダブル 4つボタン」
ダブルスーツの4つボタンには「1つ掛け」と「2つ掛け」があります。1つ掛けの場合、一番上のボタンは飾りボタンになるので、下のボタンを留めます。2つ掛けの場合は全て留めるのが基本ですが、窮屈な場合は一番下のボタンを外しても構いません。
「ダブル 6つボタン」
6つボタンの場合も、「1つ掛け」と「2つ掛け」があります。1つ掛けの場合、一番上と真ん中は飾りボタンになりますので一番下のボタンを留めてください。「2つ掛け」の場合は4つボタンと同様、全て留めるか、もしくは一番下だけを外しましょう。
「スリーピース」
スリーピースの場合、ベストは一番下のボタンだけ外します。ジャケットのボタンはシングルスーツの場合は基本的にはボタンは留めずにベストが見える状態で着用しますが、ツーピースの場合と同じルールでボタンを留めてもマナー違反にはなりません。ダブルスーツの場合はスリーピースであってもジャケットのボタンを留めるのが基本マナーです。
ついでながら、ベストにもシングルとダブルが存在します。スリーピースのジャケットはシングルが一般的ですが、ダブルのベストを合わせることで程よいクラシック感を演出できます。ダブルスーツに興味はあるものの着こなせるか心配な人は、シングルのジャケットにダブルのベストを合わせると良いでしょう。
スーツのボタンにこだわっておしゃれ上級者を目指そう
オーダースーツを作るなら、ボタン以外のディテールの特徴も知り、自分の魅力を最大限に引き出してくれる一着を手に入れましょう。
「ポケット」
ジャケットのポケットもディテールでは目立つ部分で、その形状によって印象は変わります。ビジネス仕様のジャケットであれば、蓋の付いたフラップポケットが最も一般的な形状です。雨蓋ポケットとも呼ばれ、もともと蓋はポケット内に雨やホコリが入るのを防ぐためにつけられました。一般的なフラップポケットの切り口が水平なのに対し、斜めにしたものをスラントポケットといいます。イギリスの乗馬服が起源とされ、斜めに入ったラインが体型をスリムに見せる効果があります。フラップポケットの上にもう一つついたポケットをチェンジポケットといいます。その由来は小銭を入れるためとされていますが、ウエスト位置を高く見せることから脚長効果が狙えます。
「パンツ裾」
パンツの裾もシングルとダブルとでは印象が変わってきます。シングルは足元をすっきり見せる効果が、ダブルは薄い生地であってもその重みでパンツのラインを綺麗に見せてくれる効果があります。シングルに比べると、ダブルはややカジュアル寄りの印象になり、フォーマルシーンではNGとされています。けれども、ビジネスシーンでは問題はなく、折り返しの幅を太めにするのが最近のトレンドです。一番大切なのは、体型とのバランスですので鏡を見ながらしっかり検討してください。
スーツのボタンにこだわっておしゃれ上級者を目指そう
ボタンは高級素材であれば良いというわけではなく、スーツの素材やシルエットとの相性も大切です。選ぶ際に、ボタン一つでも印象がガラリと変わってしまうので、どの種類をつければ一番スーツが引き立つのか、あれこれ迷ってしまう場合もあるでしょう。けれども、迷いながらも納得のいくスーツを作り上げていくのが、オーダーメイドの醍醐味といえます。是非、テーラーと相談をしながら選ぶ過程も楽しんでください。そうして出来上がったスーツは、「おしゃれ上級者」として周囲に印象付けることができるはずです。