STYLING GUIDE

あなたの価値を格上げ間違いなし!オーダーシューズの魅力とは

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監修:佐々木信也(淀屋橋橋店 エリアマネージャー) / 投稿日時:2018.08.04 13:29:59


ビジネスシーンやフォーマルな場に欠かせない革靴。実は靴もパターンオーダーができることを知っていますか?オーダーメイドで靴を作ると聞くと、高額でとても敷居が高そうなイメージがありますが、パターンオーダーなら比較的手頃な価格で自分好みのこだわりの一足を作ることが可能なのです。そこで、オーダーでお気に入りの一足を作ってみたい!という方に、知っておくべき基礎知識やオーダーシューズの特徴などをご紹介します。

シューズ(革靴)の基礎知識:製法

オーダーで作る革靴と既製靴の大きな違いは、製法と構造。オーダー革靴の場合、アッパーと表底の接着方法が既製品とは根本的に違います。安価な既製靴では、大量生産を可能にするために、アッパーと表底を接着剤でくっつけるセメンテッド式製法が使われます。一方、オーダー靴では接着剤を使わず、縫って接着することが多く、その分だけ値段は張りますが、接着剤を使わないため、ソールの交換ができるという大きなメリットがあります。メンテナンスをすれば長く履けるため、ずっと愛用できる一足を探している人にはおすすめです。ここではいくつかある製法の中から、代表的なものをご紹介します。


 


「グッドイヤーウェルト」


高級革靴の代表的な製法は「グッドイヤー・ウェルト式製法」で、国内のオーダー革靴では接着剤を使わない製法のなかでも耐久性に優れた、こちらの製法が採用されるケースがほとんどです。この製法で作られた靴には、製作工程上の理由から靴底前半分のエッジ部分(コバ)が張り出しているという外見的特徴があります。革靴に詳しい人ならひと目でわかるでしょう。


最大のポイントは、甲革や裏革といった甲の部分である「アッパー」と「底」を接着する方法にあります。中底につけられた 「リブ」と「アッパー」をすくい縫いしたあとに「中物」と靴の背骨となる「シャンク」を詰めてから「表底」と「細革」を出し縫いします。 この「リブ」と「細革」は、他では見られない、この製法ならではの特徴。また、デザイン面だけでなく、この製法で作られた革靴では中物を入れることができるため、長時間歩いても疲れにくく、インソールのなか敷き詰められたにコルクが歩いていくうちに持ち主の足裏に合った形になります。歩きはじめは硬い感触ですが、半月から1カ月ほどで硬さはなくなり、むしろ歩くほど足に馴染み歩きやすい靴になっていくという長所があるのです。さらに、縫製が複雑で、靴の内部から外側にかけて隙間がないことから、耐久性や耐水性にも優れています。しかも接着剤を使っていないのでソール交換を含む修理も可能。一度足の形に合ったものを作れば、永く活躍してくれるのです。


 


「マッケイ」


「グッドイヤー・ウェルト式製法」に並び、革靴の製法のなかでもメジャーな製法のひとつが「マッケイ製法」です。原型は、イタリア・マルケ地方の伝統的な製法で、これをアメリカ人の “ライアン・ブレイク” が機械化して世界中に広まりました。ヨーロッパでは、機械の開発者の名前をとって「ブレイク製法」と呼ばれることもあります。日本には、1897年ドイツからマッケイ縫いマシン(アリアンズ機)が輸入されて広く知られるように。


最大の特徴は、履き心地の柔らかさ。ソールとアッパー(甲革)を直接縫い付ける無駄のないシンプルな構造上、ソールの返りが良く、どんな柔らかい革でも靴にできるのが大きな特徴です。余計なパーツがついていないのでソールがグニャグニャと反りやすく、歩いたときに靴が足についてくるような感覚があります。履き込むうちに、足を包み込むように足馴染みするのでリピートしたくなるでしょう。コインローファーなどのスリッポン型紳士靴や、スマートなイタリア製紳士靴には、この製法が多く使われています。


 


「ステッチダウン」


軽くて屈曲性がよいカジュアルな雰囲気の靴に多く使用される「ステッチダウン製法」。靴の外側にアッパーと中底と外底が張り出すように作られているのが特徴で、靴の外周部分で縫いつけを行うため、ステッチを上からみることができます。裏革、中底を使用しないという最もシンプルな方法もありますが、裏革をつける場合アッパーは外側に、裏革は内側に釣り込み、裏革は中底に接着されます。作りが簡単で、軽く、屈曲性に優れ、足に負担をかけない作りになっていることから、かつては子供靴の製法として多く用いられていました。もちろん大人物にも使用されており、デザート・ブーツはこの製法の代表的な靴です。

シューズ(革靴)の基礎知識:スタイル

靴には基本となるスタイル(型・様式)があります。 それらのスタイルをベースに、さまざまなデザインが施され、現在のように多彩な靴のバリエーションが生まれました。スタイルの違いで、履くべきシチュエーションも変わり、 TPOにあわせてどんなスタイルの靴を選ぶかはとても重要。また、デザインばかりでなく、製法や素材等も工夫することで、履き心地や耐久性が変わってきます。ここでは、それぞれのスタイルの特徴をご紹介します。


 


「プレーントゥ」


つま先や甲に一切の装飾が施されていないシンプルなスタイルの革靴「プレーントゥ」。1800年代に考案された歩兵用の編み上げ靴が起源とされ、1930年代にはアメリカで郵便配達員や海軍士官の靴として制式採用されるなど、アメリカ文化に浸透していきました。1960年代からはアイビー出身のビジネスマンがスーツに合わせたことから、アメリカントラッドの定番靴として定着。当時、日本のスーツスタイルもアメリカの影響を色濃く受けていたため、プレーントゥは日本のビジネスシューズの代表となったのです。現在ではその汎用性の高さから、ビジネスユースだけでなくカジュアルなスタイルまで幅広いシーンで使える革靴として重宝されています。一般的には「プレーントゥ」といえば「紐靴」を指し、シューレースホールの数やアッパーの形状によって印象が変わってきます。


 


「ストレートチップ」


トゥ(つま先)の部分に横一直線の切り替えが施された革靴「ストレートチップ」。海外では「キャップトゥ」の名称で親しまれています。冠婚葬祭などで着用されることが多く、礼装が必要とされるシーンに適したデザインとしてご存知の方も多いはず。シンプルで格式高いデザインが最大の特徴で、無駄な装飾のない洗練されたデザインが多くの人々に愛され、伝統的な正装としてスーツスタイルに取り入れられてきました。中でも黒のシューレースホール‟内羽根“と呼ばれるデザインのストレートチップは定番中の定番で、最もかしこまったレザーシューズとして知られています。ただ、一概にストレートチップといっても、横一直線の切り替えデザインの周辺にパンチング加工が施されたカジュアルな印象のデザインもあるため、着用シーンに合わせてデザインチョイスすることが重要です。


 


「モンクストラップ」


バックル留めのストラップで甲をホールドするタイプの革靴「モンクストラップ」。主なデザインとして「シングルストラップ」と「ダブルストラップ」、「サイドストラップ」の3種類が存在します。「シングルストラップ」が対のバックルとストラップで足を固定させるのに対し、「ダブルストラップ」は、文字通り二対のバックルとストラップで靴を足に固定させます。履き口を押さえるようにストラップを配置したバックル留めのシューズを「サイドストラップ」あるいは「サイドモンク」と呼び、ストレートチップなどと比べると、カジュアルな印象。ビジネススタイルでは使えないことはなく、少し個性を演出したい場面には適しています。カジュアルな慶事であれば、ブレザーとチャコールグレイのトラウザーズに合わせて着用できる場合もありますが、バックル部分が華やかに見えることから弔辞での使用は避けた方が無難です。


甲周りを大きなストラップで強く押さえつける構造で、甲が低めの人にフィットしやすいという特徴も。モンクストラップの原型は古く、15世紀まで遡り、アルプス地方のモンク(修道士)が履いていたサンダルがその起源とされています。


 


「ウィングチップ」


メダリオンやパーフォレーションなどの装飾を施した革靴「ウィングチップ」。つま先(トゥ)部分に「W」のステッチを配したデザインが特徴で、起源はなんと農耕用の労働靴。のちに狩猟スポーツ用のカントリーブーツとなり、19世紀後半頃から紳士靴としても履かれるようになりました。また、穴状の装飾が施されているのも、このスタイルの特徴で、中でもつま先部分のメダリオン、パーツの繋ぎ目に大小の穴を配したパーフォレーション、ギザギザ模様のピンギング、それら全ての装飾が施されたウィングチップは「フルブローグ」とも呼ばれています。種類が多いというのも、このスタイルの特徴で、フルブローグの他に、つま先に「W」デザインが施されたカントリーブーツもウィングチップの一種。英国で誕生した内羽根ウィングチップが20世紀末にアメリカへと伝わった際、誰にでも履きやすい靴にするために様々な手が加えられたことが、種類の多さにつながったといわれています。冠婚葬祭にはあまり適したデザインとはいえませんが、仕事用としてスーツに合わせるのはOK。ただ、比較的装飾の多い派手な革靴なので職場環境を考慮する必要はあります。

オーダーシューズの種類

オーダーシューズの注文方法には木型から作る「フルオーダー」のほか、決められた木型やデザインから好きなものを選んで作る「パターンオーダー」があります。価格はパターンオーダーで3万円前後から、フルオーダーとなると10万円以上が一般的。フルオーダーは本当に合う一足を作るのが意外に難しく、木型を足に合わせるためには何足も型を作らないといけないこともあり、費用や手間の問題を考えると、初心者であればパターンオーダーが安心といえます。


 


「パターンオーダー」


あらかじめ用意されたデザインや素材から好みのものを組み合わせ、既存の木型を使用する「パターンオーダー」。デザインや素材は指定の範囲内でしか選べませんが、細かいカスタムもできるので組み合わせのパターンは豊富にあります。例えば、全体のデザインはもちろんのこと、つま先の形、素材、カラー、ライニングカラー(内張りのカラー)を選び。さらに、ソール素材やソールの仕上げ方、ヒールの素材なども選択可能です。加えて、パターンオーダーには既製品に比べて、サイズ、幅などが違う複数の木型が揃えられているため、サイズ融通がきくというメリットも。この点は既製の革靴と大きく違うところで、既製の靴だと木型が合わない人や幅やサイズがなかなか合わず、足が痛くなってしまうという人は是非一度オーダーシューズをトライすることを強くおすすめします。フルオーダーのように自分の足に合わせて木型から作るということはしませんが、木型の種類も豊富で、実際に試し履きのできるサンプルもあります。実際に靴を履き、自分に合いそうな木型を決めてから注文できるので、外反母趾などの特殊な事情がなければ、自分の足に合う一足が必ず見つかるはずです。すでにあるデザインや素材、木型を組み合わせて作るので、短納期、低コストでできるのは嬉しいポイント。


 


「フルオーダー」


決められたデザインから選ぶのではなく、個々の要望に応えながら制作するので、デザインに自由が利くという点がパターンオーダーとは大きく異なります。職人により採寸とカウンセリング、木型とデザインの設計から仮縫い、製作、フィッティングまで一貫して行われます。仮縫い、本番の計2足が仕立てられるため、必然的にコストは高く、納期もパターンオーダーよりもかなり長くかかりますが、足へのフィット感だけでなく、理想のデザインを叶えられるのは、何にも代えがたい贅沢であり最大のメリットです。

革靴をパターンオーダーするメリット

ビシッと決まったスーツ姿を作る上で、シューズの存在はとても重要。足元は意外にも人から注目される部分で、足にぴったりと合ったシューズは歩く姿勢や全体のコーディネートにも関わる大切な要素です。既製品で自分好みのシューズを探すのは大変なこともありますが、オーダーメイドなら自由自在。ここでは既製品とは一味違う、パターンオーダーのメリットを解説します。


 


「自分にピッタリの一足を作れる」


シューズをオーダーするときに最初に行われるのがヒアリングです。店舗によって多少内容は異なりますが、普段履いているシューズのブランド、サイズやフィッティングの塩梅、足の特徴や悩みなどが確認されます。そして測定器を使用しての足長や足囲の採寸をすると、かなり幅広・甲高であったり、逆に足幅が狭かったり、甲が低いというような自分が認識していなかった足のクセがわかります。そして、ヒアリング内容や採寸をもとに、フィッティングシューズを履いて合わせながら、詳細を詰めていきます。シューズのプロを傍らに自身の足と向き合うという贅沢なひと時は、必ず、自身の足にピッタリとフィットする一足に仕上げてくれるでしょう。既製靴では見つけにくい、ジャストフィットの一足と出会えることができるということが、オーダーシューズの最大のメリットなのです。


 


「こだわりの一足を作れる」


サイズが決まった後は、デザイン・モデルの選択です。フォーマルシーン向けの一足なのか、ビジネス向けなのかによって選択できるものが変わってきます。表革が重視されますが、意外にもソールの選択は大切です。通気性に優れ、高級感あるレザーソールか、雨でも滑りにくく、耐久性が高いラバーソールか、どのようなシチュエーションで履くかによって決まってきます。改めて、靴のデザイン・モデル選びひとつとってもルールや用途があり、奥深さを感じます。世界に一つだけの一足の完成を想像しながら、ひとつひとつチョイスしていくひと時は、この上なく楽しい時間。これらの工程を経て、数週間後もしくは数か月後には、こだわりが詰まった、あなただけの一足が完成するのです。


 


「リーズナブル」


フィッティングシューズですでに履き心地は確認していたにもかかわらず、出来上がった靴を履いてみると、ストレスなくスッと足を通すことができる感覚……その感動はひとしおです。


本革の靴は、少なくとも3年以上、大事に履けばもっと永く履くことが可能と言われています。オーダーシューズの場合、足にジャストフィットしているため、身体への負担だけでなく、靴自体への負荷も少なく、結果3年以上履き続けることが可能です。また、アフターサービスが充実している店舗では、靴の納品後もフィッティングに問題がある場合は、納得できるまで調整が可能であったり、修理だけでなく靴磨きをしてくれるというところもあります。オーダーシューズが既製品一足を購入するよりも高いという認識も、長く愛用できるということを考えれば、結果的にはリーズナブルなお買い物ということになるのです。

まとめ

「お洒落は足元から」というように、革靴は大変重要なアイテムの一つ。ビジネススタイルでは特に、どんなにいいオーダースーツを着ていても、足下が“決まって”いなくては台無しです。自分の足にフィットしたサイズで好みのデザインに仕上げることができるオーダーシューズは、まさにビジネスマンにとって救いの靴になるはずです。おしゃれだけでなく、自分の足に合わない靴を履き続けると、足はもちろん、体の様々な箇所に悪影響が生じることがあり、体のバランスが崩れてしまいかねません。そうならないためにも、そろそろオーダーシューズの扉を開けてみてはいかがでしょうか?