STYLING GUIDE

オーダーシャツは生地が命!?特徴や種類を徹底解説

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監修:杉原一臣(エリアマネージャー) / 投稿日時:2018.06.27 15:41:51


オーダーシャツはサイズ感やデザインだけでなく、好みの生地を選ぶことができるのも大きな魅力。生地は糸の素材だけでなく太さや織り方で厚みも肌触りも異なり、見た目や着心地がまったく違う一着に仕上がります。それぞれの特徴を正しく理解することは、好みに合う生地を選ぶために必要不可欠。そこで今回は、オーダーシャツに使われる生地の種類や特徴についてご紹介したいと思います。

オーダー方法によって生地の選択肢は異なる

シャツのオーダー方法にはパターンオーダー、イージーオーダー、フルオーダーの3種類があり、どの方法にするかによって、選べる生地の種類に幅があります。それぞれの生地選択の違いをご紹介します。

「パターンオーダー」


店が用意している既存のサイズとシルエットを基準に体型に合うものを選び、そこから首回りや裄丈のサイズなど、限られた箇所のサイズを微調整するのが「パターンオーダー」。とにかく、「安くオーダーを試してみたい」「既製品である程度、満足しているが、首回りや裄丈など調整したい」という方におすすめです。そのため、選べるデザインは比較的限定的で、生地も中国製や国産でも安価なものが多く、選択幅もあまり多くはありません。


「イージーオーダー」


型紙に合わせて生地を裁断して製作する「イージーオーダー」では、選べる生地の範囲がパターンオーダーに比べ、ぐっと増えます。もちろん、取り揃えている生地の種類は店舗によって異なるので、事前に確認することをおすすめします。


「フルオーダー」


採寸後、お客さま一人のためにシャツの基となる「型紙」を作り、生地、ボタン、デザインなど全てにおいて指定ができるのが、本格的な「フルオーダー」です。選べる生地の幅も国産から海外ブランドまで広く、好みの生地を自由に選んで製作できます。そのため、生地も徹底的にこだわりたいという人にはおすすめです。店舗によって有名ブランドの生地など品揃えの幅には差があるので、事前に使いたい生地があるかどうか確認しましょう。

定番生地の特徴を知ろう!

綿、リネン、ポリエステルがシャツの定番素材。「肌が弱いので綿100%素材を使いたい」や「コストパフォーマンスを重視したいからポリエステル混紡を使いたい」など、オーダーだからこそ自身のこだわりや要望を生地選びにまで反映させることができます。ここでは、定番生地のメリット・デメリットをご紹介します。

「綿」


吸湿性や肌触りの良さが魅力の天然素材「綿(コットン)」。程よく光沢感もあり、ワイシャツ生地には適した素材です。下着など様々な衣類にも広く使われるように肌に優しい天然素材という、着心地の良さは大きなメリットです。特に国産の高級ドレスシャツは綿100%などの天然素材製が多く、風合いや上質感にこだわる人に愛用されています。ただし、シワになりやすく、縮みやすい点はデメリット。長時間日光に当てると黄ばみやすいという特徴もあります。しかしながら、近年では、綿100%に形態安定加工を施し、綿ワイシャツの耐久性や防シワ性が高められた商品が登場。コットンのメリットを享受しながら取扱いやすい上質なシャツが登場し人気を集めています。


「リネン」


コットン以外の天然素材「リネン」。麻素材のことで、水濡れに強く丈夫で湿気も熱も外に放出してくれます。サラサラとした硬めの触り心地が特徴的で汗をたくさんかいても肌に張り付きにくく、夏季を中心に使われることが多い素材です。風通しもよく、表面の風合いも相まって非常に涼し気な印象です。洗濯はできますが、シワや縮みがおきやすいのがデメリット。高い頻度で着用し、比較的カチッとした印象が求められるビジネスシーン用のワイシャツとしてはあまり一般的ではないようです。風合いと素材のおしゃれ感を楽しむカジュアルシーンや、爽やかな印象を出したいビジネスカジュアルスタイルにおすすめです。


「ポリエステル」


軽くて丈夫でシワにもなりにくい「ポリエステル」。しかし、汗を吸いにくく、通気性もよくありません。既製品のシャツではよく用いられるポリエステル100%の生地ですが、オーダーシャツで選ばれることは稀です。オーダーシャツの生地として用いるときには、天然素材との混紡の状態で使われます。ポリエステルのお手入れのしやすさや価格の安さ、そして綿の風合いや通気性がバランスよく混紡され、ワイシャツでは最も普及している素材です。

シャツ選びの参考に!生地の織り方の種類を紹介

オーダーで選べるのは生地の色や柄だけではありません。同じ白一色でも、織り方の違いを基に好みの生地を選べるのも、オーダーシャツの魅力。また、高級な生地や機能性に優れた生地を用途に合わせて選ぶこともできます。織り方によって呼び名が異なる生地。ここでは、それぞれの特徴をご紹介します。

「ブロード」


単純に縦横十字に交差させて平織にした生地「ブロード」。糸の太さによって肌触りや光沢が異なり、高い番手になるほど光沢が増します。既製品のシャツによく使われ、ワイシャツには50番手のものが多く、80~120番手になると上質で高級感がでてきます。


「オックスフォード」


オーダーシャツの生地としてよく選ばれるのが「オックスフォード」。縦横2本ずつ糸を揃えて平織にしています。斜子織りともよばれ、比較的厚地で光沢があり、織目がはっきりしておりボタンダウンシャツによく使用されます。通気性良くシワになりにくいのも特徴です。ロイヤルオックスフォードやピンポイントオックスフォードなどは高い番手をつかっているため光沢が増し、しなやかで上品、素材感があり、ワンランク上の着こなしができます。


「ドビー」


ドットやストライプなどの織り柄が特徴の「ドビー」。織り糸で柄を出す、変わり織りの一種で、ドビー織機で織っていることから、この名前がつけられました。柄に光沢があり、素材感・高級感ある生地です。


「ヘリンボーン」


「ヘリンボーン」とは英語でニシンの骨のこと。模様がニシンの骨に似ているのが名前の由来です。日本語では「杉綾織」とよばれ、山型の連続した模様が杉の枝ぶりに見えることから、そう名付けられました。「ドビー」同様、変わり織りの一種です。


「ツイル」


たて糸、よこ糸をそれぞれ2本以上の間隔で交差させる織り方の「ツイル」。綾織ともいい、変わり織りの一種です。平織に比べると交差が少なく浮糸が多いため、生地が地厚になり、表面に出る糸の面積が多いので光沢感があり、連続した斜め模様が特徴的です。

生地以外でこだわるべきポイントはある?


見た目にも着心地にも大きく影響するのはサイズ感や生地だけではありません。同じ素材、同じ織り方の生地でも、糸の太さや縒り方によって丈夫さや光沢感、手触りが違ってきます。ここでは生地以外でこだわるべきポイントをいくつかご紹介します。

「糸の太さ」


生地のもととなる糸の太さを表す単位「番手(ばんて)」。番手の数字が大きくなるほど糸は細くなり、仕上がる生地感は柔らかく光沢があり肌触りの良いシャツとなり、番手が大きいシャツほど高級と言えます。一方、番手が小さい糸で織りあげた生地は、生地が厚いため透けにくく、丈夫な点が魅力。普段、店頭で見る商品を番手で表すと、カジュアルシャツに使われるのは40番手~80番手、フォーマルシャツに使われるのは50番手~120番手が目安となっています。


「糸のより方」


生地に使用する糸の縒り方には、1本の糸を使った「単糸(たんし)」と、 2本の糸をより合わせて1本の糸にした「双糸(そうし)」があります。シャツの生地で双糸が用いられるのは、80番手以上の細い糸のときで、同じ番手の単糸使いの生地より、細い糸を2本使う双糸のほうが丈夫でキメ細かく肌触りが良いのです。高価という点はデメリットに考える人もいるかもしれませんが、丈夫なので長く愛用できるためコスパがいいといえます。


「縫製」


上質であるかどうかを見極めるとき「縫製」をみるという人は多いのではないでしょうか。シャツの場合、高い技術と手間のかかる「シングルニードル」という方法で縫製してくれる場合があります。1本の針で縫った後、同じところの縫い代を挟むようにもう一度縫う方法で、「巻き伏せ本縫い」とも呼ばれています。縫い目が目立たずとても綺麗で肌に触れてもザラザラしないのです。縫い目(ステッチ)巾は雰囲気も左右します。巾が狭いほうがドレッシーで、広いほうがカジュアルなテイスト。そんなところまで⁉と驚くかもしれませんが、オーダーはここまでこだわることも可能なのです。


「芯地」


襟回りやカフスなど強度が必要なところには「芯地」と呼ばれる厚い布地が使われます。既製品では芯地と身頃地が接着されており、シワは寄りにくいのですが、肌触りが悪いと感じることも……。ワイシャツに芯地を使う目的は、着用したときのシルエットを良くする(保形性)と長持ちさせる(耐久性)が挙げられ、シャツの特性に応じて主に次の3種類が使われています。


● フラシ芯
● 完全接着芯
● 仮接着芯


「フラシ芯」


芯地が生地に接着していないので風合いが良く着心地に優れますが、アイロンがけがやや難しい傾向が。高度な縫製技術を必要としており、高級素材を使用した製品に多く用いられています。


「完全接着芯」


「トップヒューズ芯」とも呼ばれ、高密度ポリエチレン系の接着樹脂を使用し、半永久的に生地に接着するので形態安定シャツのような大量生産品に適しています。そのためシャツの価格が比較的安く、取り扱いが便利な商品にはこの芯地が多く、現在日本国内で販売されているワイシャツの約90%に使用されています。


「仮接着芯」


水溶性のPVA(ポリビニルアルコール)を接着樹脂として使用し、家庭洗濯で簡単に溶け、生地に接着していない「フラシ芯」と同じ状態になります。但し、ドライクリーニングでは解けないので注意が必要。カジュアルシャツなどに多く使用されています。
オーダーシャツであれば、仮接着か無接着で仕上げてもらうことが可能。芯地の差で、肌触りや着心地が変わると分かれば、こだわるべきポイントなのではないでしょうか。

まとめ

オーダーシャツは色やデザインばかりを優先していてはよいものは選べません。どんな生地を選ぶかによって、同じ色やデザインでもまったく異なる風合いのシャツに仕上がります。どのような場面で着るシャツなのかを考え、そのために必要な機能を持つ生地を選ぶ。また、理想のシャツにはどのような特徴の生地が必要なのかをよく考えたうえで生地を選ぶことも大切です。選んだ生地の種類だけでなく、それをどのように縫うか、芯地をどうするかといった違いによっても、完成したシャツが変わってきます。オーダーするのですから、縫製の仕方や芯地を既製品と同じにしておいたのでは勿体ない。縫製や芯地にまでしっかりこだわって、納得のいくオーダーシャツに仕上げたいものですよね。また、直接体に触れるものですから、肌触りや着心地のことも十分に考えて作ることもおすすめします。