STYLING GUIDE

フォーマルスーツ(礼服)の正しい選び方について 

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監修:石川佳宏(青山店 エリアマネージャー) / 投稿日時:2018.05.22 16:09:21


結婚式や格式の高いパーティーなどに出席するときには、フォーマルな装いを求められます。けれどもその一方で、フォーマルの定義が曖昧になっていることもあり、間違った着こなしをしている人は少なくありません。そこで今回は、正しい「フォーマルスーツ」の選び方と着こなし方についてご紹介します。

フォーマルスーツとはどういうものを指すのか


フォーマルという言葉は便利なため広く使われていますが、そもそもどんな意味なのでしょう。調べると「正式なさま・公式なさま・儀礼的」などの意味が並んでいます。ゆえに「フォーマルスーツ」とは「公式な場で着用するスーツ」を意味します。公式な場とは、主に授賞式や結婚式、セレモニーと言った式典のことを指し、格式が高いホテルでの食事会なども含まれます。このように一般的なスーツとは異なり、特別な装いであると認識してください。

フォーマルスーツの種類

フォーマルスーツには三つの格式があり、最も格式が高い順から正礼装、準礼装、略礼装となります。招待状を受け取って、どの種類のスーツを着て行けばよいのかを判断するときには、まず「オケージョン(場の格式の高さ)」と「時間(18:00以前か以降か)」を確認しましょう。さらに「立場(ホストかゲストか)」が判断に加わるときもあります。例えば、結婚式では主催者側(ホスト)は正礼装、招待客(ゲスト)の主賓は準礼装、一般招待客(ゲスト)はブラックスーツを着用するのが適切です。立場が異なれば、フォーマルスーツの種類も異なる場があることを知っておくと良いでしょう。


「正礼装:モーニングコート、イブニングコート、タキシード」


フォーマルスーツの中で「最も格式が高い場」で着用するスーツが正礼装です。「最も格式が高い場」とは、宮中行事や公式の式典、具体的には内閣総理大臣・最高裁判所長官の親任式などがあります。国内外の要人の正礼装姿を、テレビで観たことがある人もいるのではないでしょうか。もっと身近なシーンでは、フォーマルな結婚式での新郎新婦の父親や、告別式での喪主が着用することがあります。

モーニングコート


モーニングコートは昼間に着用するフォーマルスーツの中で最も格式が高いスーツです。前裾を大きくカットした独特の形状は、乗馬服に由来しています。18世紀のイギリス貴族が朝の乗馬の後に、そのままフォーマルな場へ行けるようにこのような形になりました。剣のように鋭角に尖った下衿はピークドラペルと呼ばれる衿型で、フォーマルスーツによく見られる形状です。ベストは上着と共地の黒(白衿付き)かグレー、パンツは黒とグレーのコールズボン、ネクタイはシルクのコールタイやアスコットタイを合わせます。喪主として着用する場合は、小物は全て黒で統一してベストの白衿は外します。


 


イブニングコート(燕尾服)・ホワイトタイ


イブニングコートは、夜間のフォーマルスーツの中で最も格式の高いスーツであり、後ろ裾が長くツバメの尾のように二つに割れていることから燕尾服(テイルコート)とも呼ばれています。こちらも乗馬服が原型ですが、モーニングコートとの大きな違いは、必ず白い蝶ネクタイと白ピケベストを着用するところでしょう。そのことから別名「ホワイトタイ」とも呼ばれ、招待状に「ホワイトタイ」と指定があればこちらを着用します。


 


タキシード・ブラックタイ


タキシードは本来は夜間の男性用の準礼装ですが、イブニングコートの代わりにタキシードを正礼装として着用することが多くなりました。もともとは、紳士が食後にタバコを燻らせながら寛ぐときに着ていた服「スモーキングジャケット」が原型です。ウエストコート(ベスト)もしくは、カマーバンド(腹部に巻く飾り帯)を必ず着用します。また黒の蝶ネクタイをつけることからブラックタイとも呼ばれ、招待状に「ブラックタイ」と指定があればタキシードを着るのがマナーです。たまに「ブラックタイ」とは黒いネクタイや蝶ネクタイをつければよいと勘違いされることがありますが、ブラックタイ=タキシードと覚えておいてください。


 


「準礼装:ディレクターズスーツ、タキシード」


準礼装とは、正礼装のひとつ格下に当たるフォーマルスーツです。海外では礼装とされないブラックスーツが日本では略礼装となるため、ブラックスーツのひとつ格上、つまり格式の中では中間的な位置付けになります。


 


ディレクターズスーツ


ディレクターズスーツは、黒色の背広とコールズボンを合わせた昼間の準礼装です。シャツはウィングカラーを合わせ、グレーのウエストコート、シルバーグレーのタイを合わせます。モーニングコートの裾を短く切ったようなスタイルと言えるでしょう。指導者や管理者を表すディレクター(director)用の執務服とされたことが名前の由来であり、一般的には結婚式の主賓や上司が着用します。


 


タキシード・ブラックタイ


タキシードは正礼装の項目で述べた通り、夜間の正礼装としても着用されますが、もともとはイブニングコート(燕尾服)のひとつ格下になる夜の準礼装です。正礼装として着る場合と装いに変わりはありません。


「略礼装:ブラックスーツ」


略礼装とは、ブラックスーツと呼ばれるフォーマルスーツを指します。ブラックスーツは昼夜関係なく着用できます。ビジネス用のブラックスーツとは生地の質感や黒の色の深さが全く違いますので別物と考えてください。ネクタイは慶事の場合は白やシルバーなど、弔事の場合は黒を合わせます。

ビジネススーツとフォーマルスーツの違いは?


ビジネススーツとフォーマルスーツとでは、着用するシーンが違います。ビジネススーツは日常的な場で着用するのに対し、フォーマルスーツは非日常的な場のためのスーツです。ビジネススーツでも、生地の質や柄、合わせる靴や小物によって「フォーマルな着こなし」になる場合がありますが、それを「フォーマルスーツを着用する」とは言いません。ビジネススーツとフォーマルスーツは、全く異なる場で着る服装という認識を持っておきましょう。

フォーマルスーツに合わせる小物の選び方

フォーマルスーツに合わせる小物にも、ルールがあります。小物は品質が良く、手入れの行き届いたものを使用します。


フォーマルスーツのシャツは基本的に白無地のウィングカラーです。素材は光沢のあるブロードクロスを使用する場合が多いです。


弔事でモーニングコートやブラックスーツを着用する場合は、白無地のブロードクロス、衿はレギュラーカラーがマナーです。


 


「ベスト」


フォーマルスーツの場合、ベストは必ず着用します。シングルの前合わせのものは、ベストがないと不完全な着こなしとなります。ただし、タキシードの場合はカマーバンドを巻きます。カマーバンドはベストが簡略化されたものなのでベストは着用しなくても問題ありません。


弔事では、モーニングコートの場合は白衿を外した黒のベストを着用します。ブラックスーツにおいても慶事ではベストの着用が正式な装いではありますが、弔事では主催者が2ピースを着用している場合も多く、自分が3ピースを着用してしまうと主催者よりも格上になってしまうことから、2ピースで参列します。


「靴」


フォーマルスーツに合わせる靴にも昼用と夜用があり、色は黒のみとなります。


18:00以前」の場合 紐付き内羽根のストレートチップ


18:00以降」の場合 オペラパンプス またはパテントレザー(エナメルレザー)素材で紐付き内羽根のプレーントゥ


弔事では、紐付き内羽根のストレートチップかプレーントゥを履きます。パテントレザーなど光沢のある素材はマナー違反になります。


「チーフ」


高品質なリネン100%の白無地ポケットチーフを挿します。チーフの折り方はスリーピークスが基本となります。スリーピークスとは、きっちりと3つの角を立てた折り方・挿し方です。パーティーシーンなどでは、華やかなパフドスタイルもおすすめです。


弔事では、チーフは不要です。


 


「カフス」


フォーマルスーツを着用する際は必ずカフスを付けます。モーニングコート、イブニングコート、ディレクターズスーツにはシルバーやゴールド台の白蝶貝を、タキシードには黒蝶貝やオニキスを合わせます。ブラックスーツの場合は、カフスを付けなくてもマナー違反にはなりませんが、結婚式など華やかなシーンには積極的に取り入れましょう。


弔事ではカフスはつけません。

まとめ

フォーマルスーツには来歴に沿ったルールがあります。そのルールに則って正しく着ることが大切です。人が多く集まるパーティーなどで、マナーから外れた装いをしてしまっては恥ずかしい思いをしてしまい、その場を楽しめなくなるでしょう。堅苦しさや面倒臭さを感じるかもしれませんが、逆に考えてみてください。普段着る機会のないフォーマルスーツで非日常的な場に行くということは、日常にはない経験や体験ができるということなのです。