スーツに合わせる正解シャツとは?シャツ選びの基礎とオーダー術
監修:石川佳宏(エリアマネージャー) / 投稿日時:2018.05.22 15:17:56
目次
スーツを正しく着こなす上で、重要となるシャツ選び。クールビズ導入から、一年のうちに「ジャケットを着用しない期間」が増えたため、シャツはコーディネートの中心にもなりえるアイテムとなりました。ジャケットを着用していても、ジャケットの下から覗くシャツの選び方ひとつで、着こなしの熟練度が伺えます。そこでシャツの基本的な知識やサイズの決め方、周りと差が付くコーディネートの方法を知ることで着こなしの幅を広げてみましょう。
「衿型」
基本3種
・ワイドカラー
・カッタウェイ
・ボタンダウン
ワイドカラー
衿が左右に程よく開き首周りがスッキリと見える種類(衿型)で、最もベーシックかつフォーマルな位置付けになります。また、「クラシック」(変わらない・普遍的な物)とも解釈できるので、ビジネスシーンでの基本ともされています。金融や商社など堅めなビジネスシーンが多い場合は、複数揃えておけば間違いなく、就活などでも最初に揃えておきたい衿型です。
カッタウェイ
衿の開きが160~180度と大きく開いているタイプで、180度のものはホリゾンタルともいわれています。この衿型は首周りがスッキリと見えるので細身のスーツとの相性が良く、クールな印象を与えてくれます。第一ボタンを開けても衿の立体感が保てるため、ノーネクタイで着用することも可能。クールビズでもキレのあるスタイルに仕上がります。
ボタンダウン
英国のポロ競技用シャツから進化したとされるボタンダウンは、衿の先端がボタンで固定されている衿型です。このタイプはスポーツから由来されていることもあり、最もカジュアルな位置付けのシャツになります。そのため、ハイクラスの商談や、面接などのシーンなどには向きません。 一方ノーネクタイや、カジュアルな場での着用には適度なリラックス感を演出することができて最適です。クールビズでの着用にも向いています。
応用2種
装いに正統派な個性をプラスするなら英国の代表的スタイルがおすすめです。
1.ラウンドカラー
2.タブカラー
ラウンドカラー
衿の先端が丸くカーブしている種類を指し、「柔軟さや安心感、丁寧」な印象を与えます。
ビジネスにおいては、「カッタウェイ」と「ワイドカラー」の中間程度に位置するフォーマル度合いです。衿と袖口のみ白で身頃に色を合わせるタイプに多く使われます。
タブカラー
衿の先にダブ(紐)が付いている衿型です。ダブカラーでネクタイを締めると、ネクタイに立体感と引き締め感が強くなり、ネクタイのノットがキュッと小さい印象になります。ラウンドカラー同様、「カッタウェイ」と「ワイドカラー」の中間に位置するフォーマル度合いの衿型です。
「生地の織り方」
一般的にワイシャツの生地選びを見れば、スーツスタイルの装い力が見えると言われています。それは、どの生地を選ぶかで、その人の仕事に対する繊細な意識が見えてしまうからです。気を抜かないビジネスマンとして選ぶなら、「ブロードクロス」「ツイル」「シャンブレイ」「オックスフォード」の4種類は基本の織り方として覚えておきましょう。「ブロードクロス」が最もフォーマル度が高く、順に続いて「オックスフォード」が最もカジュアル度が高い位置付けになります。
・ブロードクロス
・ツイル
・シャンブレイ
・オックスフォード
ブロードクロス
ブロードクロスは、縦糸と横糸に同じ太さの糸を使用した高密度な平織りの生地です。一般的に広くドレスシャツに使用されており、表面にはなめらかな光沢があります。高い番手になるほど光沢が増します。ビジネスシーンにおいて、最もフォーマル度が高いシャツです。
ツイル
ツイルとは織り目が斜めの綾織り総称です。表面に光沢があり、やや厚地でシワになりにくいなのが特徴。綿だけではなく、シルクなどがあります。ブロードクロスに次いで、フォーマル度が高いためビジネス向きの生地です。
シャンブレー
シャンブレーとは、縦糸を色糸、横糸を晒し糸(*1)にして、織り上げた生地の総称です。刷毛目(ハケメ)という、まるで刷毛で履いたような柄が出るのが特徴です。軽く爽やかな印象を与えます。中間よりもややカジュアルに位置する生地です。
(*1)晒し糸とは生綿糸を漂白したもの
オックスフォード
オックスフォードは、縦糸と横糸を2本ずつ引き揃えて平織りにした生地。ボタンダウンの代表的なシャツ素材として広く知られています。ソフトで通気性があり丈夫で厚手の生地の代表とも言われています。
「色」
選ぶべき基本色は、白、サックスブルーの2色。外資系の企業などはクリーム色やベビーピンクの着用もありますが、仕事より装いだけが先行してしまう場合もあるので、20代では注意が必要です。綿100%やポリエステル、リネン混などで、季節により青みがかった色やオフホワイトなどに変えると個性を感じさせることもできます。ワイシャツはメンズファッションの歴史では下着の部類に考えられていましたが、現代ではクールビスを代表するシャツ一枚でのスタイルもあるので、襟汚れや食べこぼしのシミなどは持っての外。常に清潔感を感じさせるよう、漂白などをして管理をしましょう。
「柄」
スーツの柄の種類と同様、シャツにおける柄も「ストライプ」「チェック」が主流になります。体型や色、線の強弱や柄の大きさの組み合わせで、印象をガラリと変えることができますが、適切なセレクトでなければ、ただ派手な印象に繋がってしまうので注意が必要です。柄が大きくなれば、カジュアルになり、小さくなればフォーマルになります。大柄の人は大柄を、小柄の人は小柄を選びましょう。柄選びは伝統的な柄(ロンドンストライプ、ギンガムチェック)から揃えていくのがおすすめ。できるだけベーシックな柄でコーディネートしていく方が、かえって垢抜けた印象になります。
ストライプ
ストライプは、縞模様の柄で、線の太さや本数、色でとても表情が変化します。幅が太くなればなるほどに、カジュアル度が高くなり、スーツには相応しくなくなります。間隔が狭すぎないピンストライプが正統派な印象でどんなシーンにも好まれます。
チェック
シャツに使用するチェックは、白地に縦横同じ太さの薄い格子が入ったシンプルな格子柄か、ギンガムチェックが代表的です。ギンガムチェックはカジュアル度が高い柄なので、フォーマルな場には向きません。柄の大小は関係なくフォーマルにはならないので、カジュアルなシーンでのみ使用できる柄として認識しておきましょう。
「機能」
タイトすぎるシャツの場合、人間の体の動きに付いていけないため、必要以上にシワになってしまうことがあり、機能として問題があります。近年アームホールが細いジャケットが多くなっているので既成のシャツで、アームホールが詰まったジャケットに合わせると、シャツのアームホールの方が広く、袖が上がってしまうことがあります。ジャケットのアームホールに合わせて、シャツのタイトさを考えても良いでしょう。
ワイシャツを選ぶときの注意点
シャツの種類は、衿型と生地(織り方)で決定付けられます。また衿型に応じて、ふさわしい生地(織り方)が関連付けられているということも知っておきましょう。例えば、オックスフォードでワイドカラーを作ることは、ルール違反ではないですが、あまり一般的でない組み合わせです。ブロードクロスでボタンダウンを作っても良いのですが、ボタンダウンらしさが出ません。衿型と生地の相性もセレクトの大きな基準になるのです。また体が大きい方はシャツの衿が小さい物は、避けた方が良いでしょう。必要以上に体や顔が大きく見えてしまうためです。一方で体が小さい方は、大きな衿が似合いにくいので、避けましょう。
「スーツとシャツの柄の合わせ方について」
スーツスタイルでシャツとの柄合わせをするべきか悩むことがありますが、着こなしにリズムが出るため、積極的に行うことをお勧めします。ただし柄合わせには、コツが2つあるので覚えておきましょう。
まず、1つ目は柄幅を合わせないこと。スーツと同じ柄幅のシャツを合わせると、印象が強すぎて自身に目が行かなくなってしまいます。2つ目は、同じ柄でも大小など強弱をつけること。ジャケットで強い柄を使用しているのであれば、シャツは弱い柄にして、強弱をコントロールします。
また柄合わせをする場合に気をつけたいのがネクタイ。ネクタイは無地にするより、柄をプラスする方がこなれた印象になり上級者の装いになります。自信がない時はスタッフに気軽に相談してみましょう。
「サイズの選び方について」
近年はシャツに限らずスーツもタイトフィットが主流化しています。しかしタイトなシャツはよほどなストレッチ素材でなければ着づらくなってしまうので、適度な余裕が必要です。しっかりと自分のサイズを把握して選ぶことが大切です。
・首回りのサイズ
・袖丈
・胸周り・胴回り
首周りのサイズ
首周りは、*ヌード寸+2~3cmで採寸します。ちょうど、指1本分入るのが理想的なサイズです。
ネクタイを必ず締めるシャツは、最も首周りを重要視して選びましょう。体重の増減により首回りのサイズも変化しやすいので必ずチェックが必要です。
袖丈
袖丈は肘を少しだけ曲げた状態でくるぶしが隠れる程度で採寸します。ジャケットから1.0~1.5cm見える長さが良いでしょう。少しだけ袖が長くてもボタンで止まるので問題ありません。袖のたるみに関しては、アームガータなどで調節ができます。
胸周り・胴回り
胸周り、胴回りはヌード寸+10cmが基本です。ヌード寸+10cmよりも下回るシャツはかなりタイトになり動きづらくなるので適度な緩みがあるものにしましょう。特に胴囲がある人は、会食中ジャケットを脱いだときに、ボタンが左右に引っ張られることなどがないサイズであることが必須です。
*ヌード寸 … ヌード寸とは実際の体の寸法を計測した物です。実際の体の寸法に基づいた衣服を作るための基準寸法です。シャツの首周りの場合「ヌード寸+2~3cm」なので「実際の体の寸法(ヌード寸)+ゆとり分(2~3cm)」が、ジャストサイズのシャツの首周りとなります。
シーン別コーディネート術
スーツを着るときに考えるべきは、基本的にビジネスなど同席する相手にどのような印象を与えたいかということです。そのため、シャツ選びもスーツ選びと同様、着用シーンが、「フォーマル」から「カジュアル」のどの間に属しているかということに注目します。
また選ぶ順番としてシャツを最初に選ぶことはありません。ジャケットやパンツを決めると、そのコーディネートのルールに沿ってシャツの種類(衿型)が、決まってきます。「コーディネートの基本に沿ってシャツを決定する」ということが、大切です。
しかし、意外にもスリーピースのクラシックスタイルのスーツに、ボタンダウンを合わせてしまうというような、間違ったコーディネートをしてしまっている人が多いのが現状です。
「堅めのビジネスシーン」
堅めのビジネスでは、いつどんな方に会っても失礼のないワイドカラーの白シャツが正解。ネクタイも遊びのないレジメンタルタイでベーシックに。向かって右上からのストライプはアメリカ式、左上からのストライプは英国式になりますので、知識として心得ておきましょう。色は控えめのネイビーかレッドがベター。堅めのビジネスでは、濃紺のスーツで信頼感を与える印象にまとめると良いでしょう。
「ライトなビジネスシーン」
かるめのビジネスシーンでも、ビジネスでスーツを着用するならワイドカラーは外せません。ただし、少しフォーマル度を落として、スーツにストライプやチェックなど柄物を取り入れることができます。シャツの色もサックスブルーに変えて、ネクタイもタイの柄幅を広い物にすれば、個性を表現することができます。時にはグリーンやワインカラーを取り入れて、少しおしゃれな雰囲気を楽しんでみてはいかがでしょうか?
「昼間のパーティー」
ビジネスではカジュアルなパーティーの場合でも、基本ジャケット着用であることがほとんどです。スーツではなくてもジャケットとパンツスタイルでこなれ感を演出することができるので、覚えておくといいでしょう。チェック柄のジャケットの場合は、ネクタイもウールタイもしくは、ニットタイで合わせ、シャツは、カジュアルなボタンダウンをチョイスすれば、普段と違う一面を見せることができるでしょう。
「夕方以降のパーティー」
ややフォーマル度の高いパーティーには、光沢のあるブロードクロスの白のシャツを合わせます。
ウィングカラーではなくても、ビジネスで使える襟のシャツ(ワイドカラー)でも問題ありません。ときには蝶タイなどで、非日常感を楽しむコーディネートにまとめると、気分も上がります。少し光沢感のあるジャケットを合わせると全体が、華やか印象にまとまるでしょう。
まとめ
スーツと違いシャツは何気なく購入してしまいがちですが、覚えておくべきは、シャツはスーツを購入したお店で、購入する方が良いということ。というのも、スーツスタイルに応じたシャツを選べるため、着こなしをワンランク上に整えられるからです。
さらにシャツには細かい種類がありますが、ネクタイを「するのか」「しないのか」を観点に選ぶと良いでしょう。クールビズ導入で、ノーネクタイの機会が増えましたが、ノーネクタイの時に着ていたボタンダウンのシャツをそのまま、ネクタイをする時に使用するのはすすめられません。ネクタイをするのであれば、ワイドカラーなどネクタイをする時に適したシャツを選びましょう。
また、体にぴったりと合ったオーダーシャツは、特に愛着が湧く物なので、できるだけ家で洗って長く着るのがベスト。自分のアイデンティティを表すアイテムのひとつと思って、キチンとアイロンをかけて、着こなしを高めましょう。