STYLING GUIDE

トレンド感と価格のバランスが良い「トレーニョ」はビジネススーツにも最適のイタリア生地

投稿日時:2022.03.25 17:53:19

「Tollegno」はトレーニョと読む、イタリアの高級素材です。


「トレーニョ」というブランド自体を前面に押し出す、積極的なプロモーション活動はしていないため、日本での一般的な認知度は他のイタリア人気ブランドに比べると低く、知っている方でも、地味な印象を持たれるかもしれません。


2017年頃までの「トレーニョ」生地のネームには、「Lanificio di Tollegno」と記載されていました。


「Lanificio」はイタリア語で、羊毛工場を意味します。


ファッションブランドと言うよりも、ファクトリーブランドとしての立ち位置であることを、明確に表現していたという事です。


2018年頃からはファッションブランドへと転換して、「Tollegno 1900」に表記を変更しています。


転換前後で会社の事業内容に変更は無く、「紡績」「染色」「織り」「仕上げ」まで一貫生産が出来る、イタリア有数のファクトリーメーカーです。


買い付けた原毛を糸にする紡績事業は、自社織物用だけに用いるのでは無く、糸を商品として他の織物メーカーに販売する売上も多く、有力な紡績メーカーとしての顔も持っています。


日本にあるトレーニョジャパンの主力事業内容も、糸の販売です。


「トレーニョ」は、高級アパレルブランドに生地を供給する実績が高く、「アルマーニ」「ベルサーチ」など有力ブランドを含めて、コンスタントにウール織物を販売しています。


これは、こだわりが強いハイブランドを納得させるだけの、魅力と価格バランスが卓越していることの証明です。


世界にある数多くのオーダーテーラーにも、「トレーニョ」のウール素材は供給されています。

ブランドの歴史

「トレーニョ」がブランドネームに使用している「1900」は、設立年の1900年を表しています。


上質な毛織物の産地は世界でも限られていて、カルシウムとマグネシウムが少ない良質な軟水を、大量に確保できる場所ということが共通しています。


有名な毛織物産地の一つ、イギリスの「ハダースフィールド」は、コルネ川とホルム川があり、日本の一宮市を中心とした「尾州エリア」には木曽川が有ります。


イタリアの「ビエラ地区」には、アルプスからの豊富な天然水をたたえる、セッセラ川・ヴァルデスコラ川・セージア川・ドルカ川などが集中しています。


多くのイタリア有名毛織物メーカーがビエラ地区に集中していますが、「トレーニョ」もその中の歴史有る一社に数えられています。


100年を優に超える歴史に安住すること無く、紡績から織り・仕上げに至るまで、常に革新を追求し、売上の7%を設備投資に費やす事を公言しています。


前近代的な設備が多く残る毛織物産業で、デジタル化・自動化をいち早く成し遂げ、高い生産性を実現しています。


現在ではサスティナビリティへの取り組みにも積極的です。


水質保全や太陽光発電だけでなく、2015年以降はタスマニアの現地企業と協力して、羊毛収穫の全ての段階で倫理的な方法・牧草地の保全プロジェクトを進行しています。

織物の基本知識

「トレーニョ」の品質の高さを理解するために、役に立つ織物の基本的な知識を見ていきましょう。


素材としてのテキスタイル善し悪しは、多くの複合的な要素で構成されています。


基本として、「どれくらいの太さの糸」を、「どれくらいの密度」で、「どんな組織(織り方)」をするか?をおさえる事です。


糸の太さ

太い糸を使えれば、ザックリとしたテキスタイルに仕上がり、細い糸を使用すれば繊細な仕上がりになります。


スーツ地としては、主に2/48から2/80程度の糸番手が使われます。数字が大きくなるほど細い糸を表します。2/80のことを80双糸(そうし)と読みます。


羊毛は2本の糸を撚(よ)って(ねじり上げるイメージです)、織物に用いられます。


双糸にする事により、安定した均一な太さになるため、一般的なウール素材に使われています。


1本の糸を撚って使う、単糸使いの織物もあります。1/30と表記して30単糸と読みます。


1/30と2/60は同じ太さになります。双糸と比較して均一感が劣る事を逆手に取り、織物に表情を加える事に多く用いられます。


羊毛の原料グレード(繊細さ)によって、糸の太さに用いる事の出来る限度があります。


細番手の糸を製造するのには、原料の繊細さが必要になります。


当然原料が繊細ならば、コストは高くなります。


本来織物は芸術では無く営利目的で製造されるので、よりコストの安い羊毛原料を使用して、如何に細い糸を作成するかに力を集中します。


しかし上質な素材は、これらのセオリーを無視して製造されています。


本来であれば2/80番手の製造が可能な上質原料を用いて、2/48や2/60番手を製造にすることにより、「滑らかさ」「上質な手触り」を表現しています。


同じウールの生地でも、中国産を中心とした普及品とブランド生地の差は、このような違いがあります。


よく誤解されるのは、「super100’」や「super120’」を糸の細さと解説されている事です。


これらは原料の繊細さを表していて、糸の太さではありません。中身は多くの差が存在していて、同じ「super100’」と表示されていても、個別に比較すれば大きな優劣が存在します。


数値的には同じ繊細さを持つ原料でも、羊毛本来の持つ「クリンプ」と呼ばれる縮れが、織物の仕上がり品質に大きな影響を与えます。


上質なクリンプを持つ原料は、弾力性に富み、優れた張りコシとシワからの回復力に繋がります。


上質なウールは、着用した後で適正にハンガーに掛けておけば、シワが自然に回復するのは「クリンプ」が大きな役割を果たしています。


密度

「打ち込み本数」と呼ばれています。


決められた範囲に、縦横どれくらいの糸が入っているのか?ということが、生地の仕上がりには、大きく影響します。


「打ち込み本数」は、少なければソフトになる反面、特にメンズでは必要な張りコシが無くなり、物性的な問題(縫い目から裂ける等)が出ます。


逆に「打ち込み本数」が多ければ、張りコシが出て物性的な問題も解決出来ますが、全体的には固くなってしまいます。


上質なブランド素材は、「打ち込み本数」が多くなっても、使う糸の上質さで固くなる事が無く、「張りコシ」がありながら、「しなやかさ」を出す事を両立させています。


「打ち込み本数」は、コストに直接反映されます。


「打ち込み本数」が多くなれば、同じメーター数を織り上げるのに時間が掛かるためです。


コストを考えれば、打ち込むスピードが速ければ速いほど、生産効率は上がります。


しかし、早いスピードで糸を飛ばせばテンションが掛かり、羊毛の持つ素晴らしい特性のクリンプが持つ効果は減少してしまいます。


上質なブランド素材は、生産効率が落ちてコストが上昇しても、クリンプ特性に最適なテンションに収まるスピードを選択することで、高い品質を生み出します。


織り組織

大きく分けて、「平織り」「綾織り」「繻子(しゅす)織り」があります。


平織りは、主に春夏に使われる清涼感が出る軽量な織物で、最も基本的な織り方であり、使っている糸の品質がダイレクトに出ます。トロピカルウールと呼ばれます。


同じトロピカルウールでも、上質なブランド素材は、原料の良さと適正な「打ち込み本数」によって、中国を中心とした普及品とは確実に大きな差が出ます。


伝統的な春夏素材として、上質なブランド素材は「綾織り」を用いる事があります。


「綾織り」ではトロピカルウールと比較して、織物に重量が付くため、細番手の糸が使われます。清涼感を持たせるため、撚糸回数を増加させた強撚糸を使う事もあります。


どちらの手段も、コストが掛かる手法です。


「綾織り」「繻子織り」は比較的重量を付けやすいため、主に秋冬素材として使われます。


コストを考えれば、太番手糸をシンプルな綾織りで仕上げる事で、秋冬の利用に使える生地には仕上がります。


上質なブランド素材は、敢えて品質の高い細番手糸を用いて、織り組織に変化を持たせることによって、秋冬の利用に使える重量感の構築をします。上質な原料糸をたっぷり使うので、必然的にコストは高くなります。

トレーニョ素材の特徴

「トレーニョ」は紡績の強みを活かし、豊富な種類の霜降り糸を使用して、膨大なアーカイブと現在のトレンドを融合した表現に長けています。


18.5ミクロンから19.5ミクロンの「エクストラファインウール」を得意としていて、紳士服として使いやすいボリュームゾーンに経営資源を集中させている事と、最新の設備によって高いコストパフォーマンスを実現しています。


上質な原料と豊かな水を使った、ビエラ産地織物らしい豊かな発色と、軽い着用感と美しいドレープに定評があります。


歴史を感じさせるオーソドックスな定番柄から、トレンドを加味した柄まで豊富なデザインを毎年リリースしています。


「トレーニョ」のメリノウール生地は、ビジネススーツに最適です。

染め方とリスクとコストの関係

トレーニョの良さを、より深く知る上で、色の表現手法である「霜降り」「TOP」は欠かすことが出来ません。


染色と呼ばれる織物の色が、どんな製造工程で表現されるのか、簡単に解説します。


ウール糸の染め方として、大きく分けると3つあります。


生産コストは染め方と売れ残りリスクが大きく反映され、生地の販売価格が変わってきます。


原料の綿状になっているウールは染めずに白いまま糸にして、白い織物で反物を作成し、反物ごと染める事を後染めと言います。


生機(きばた)と呼ばれる白い反物さえ準備しておけば、注文が入ってから染色と仕上げ工程だけで完成出来るので、売れ残りリスクの少ない生産方法です。店頭が欲しがっているトレンドカラーが、黒からブルーに変わっても、最短期間で納品が可能です。


しかし、変化の無い単調な無地しか出来ない事もあり、ビエラ地区の織物メーカーでは、この手段を殆ど採用していません。


原料から糸の状態にするところまでは後染めと同じですが、織る前の糸の状態で染め工程を行い、出来上がった糸を柄に従って並べて、織られた織物を先染めと言います。


糸の状態でストックしておけば、必要になった時に染めれば良く、売れ残るリスクは比較的低いと言えます。


染め糸で表現出来る美しい柄は沢山有りますが、ビンテージテイストな柄を表現するのには限界が有ります。


ビンテージテイストの柄には、霜降り染めと呼ばれる、ウールが綿の状態で染めたものを、何種類か組み合わせて攪拌(かくはん)した後に、その綿状態から糸にしたものが使われています。業界ではこれをTOP染めや、TOPと呼びます。


1本の糸が単調なカラーでは無く、奥行きがあり深みのある色表現になります。


TOP染めの糸は、少量では生産することが出来ません。


経済ロットと呼ばれる採算のとれる数量は、決して小さくありません。


使う色数だけ大量のTOP糸を生産しなければ、織物は完成しません。


時間と生産コストが掛かる上、他に転用も効かないため、売れ残った時のリスクは大きくなります。織物の生産を重ねる中で、1色だけ足りなくなっても、そのTOP糸を大量に生産してからでないと、継続する事も出来ません。


TOP糸を使った織物は、高い生産コストにリスクが加わって最も高額になります。


通常の紡績から織物の完成まで行う一貫生産メーカーでは、TOP糸は定番的なカラーの生産に留めて、先行きが解らずリスクの高いトレンドカラー等は、一般的に避ける傾向にあります。


「トレーニョ」は紡績メーカーとしての顔も持ち、世界中に多数の織物生産メーカーの顧客を持っている事から、豊富なカラーバリエーションの生産が可能です。


更に転用が効かないことでリスクが高くなり、生産コストも高くなる異色のTOP糸を組み合わせて撚る、希少な杢糸の生産も積極的に行うことで、他社との差別化を図っています。


そんな希少で高価な糸を、惜しみなく使って織られている「トレーニョ」の素材を具体的に見ていきましょう。

秋冬のトレーニョ素材

「トレーニョ」の素材は、贅沢にTOP糸を使っています。


コストの高いTOP糸を同色で双糸にせずに、異なったカラーの糸を撚糸する杢糸TOP使いの織物は、さらにコストが上昇します。


作成した糸は、ますます他に転用が効かなくなり、生産コストも掛かるからです。


杢糸TOP使いの織物は無地でも深みがあり、上質な原料と相まった発色と艶が、独特の存在感を示しています。

トラディショナルな柄表現には、TOP原料の使用が欠かせません。


エクストラファインウールを使用していて、高価なTOP糸がしっかりと打ち込まれている事で、クラッシックを意識した適度なハリとコシがあり、スリムなスーツシルエットに良く合います。

比較的シンプルなストライプも、TOP糸で作成すると、これほど格好良くなります。

特に右の紺系ストライプは、本物のヴィンテージ感が高く、クラッシックなスーツに仕立てることで、トレンドを意識したお洒落が楽しめます。


Tollegnoの生地詳細を見る>>

まとめ

「トレーニョ」は、素材だけで見るよりも、仕立てる事で良さが解ります。


しかも、最新の合理化された設備で生産されることで、コストパフォーマンスも抜群です。


有名ブランドの目利きバイヤーが採用する、イタリア生地らしい独特の軽さと豊かな表現力は、スタイリッシュに大人の色気が表現出来ます。


イタリアの伊達を楽しむお洒落には、サイズ感がとても重要です。


ジャストサイズのオーダースーツに、「トレーニョ」の生地は最適です。