STYLING GUIDE

価格以上の品質を誇る「マルラーネ」はビジネススーツに最適の老舗生地ブランド

投稿日時:2022.03.25 16:40:21

「MARLANE」は、マルラーネと読みます。


創業は1952年と比較的新しく、イタリアのウール織物産地であるビエラ地方にある、高級生地メーカーです。


「マルラーネ」は、イタリアの大手「Marzotto」(マルゾット)グループの一員です。


「マルゾット」は他にも、「FRATELLI TALLIA DI DELFINO」(フラッテッリ・タリア・デルフィノ)、「GUABELLO」(グアベロ)などの、有名生地ブランドメーカーを傘下に持っています。


グループ中では、各社で独立した企画を毎シーズン行っています。


「マルゾット」は、幅広い価格帯とクオリティを持ち、柔軟な対応力で世界中のマーケットに大量の販売をしているトップブランドです。


「フラッテッリ・タリア・デルフィノ」は1903年創業の老舗で、「エルメネジルド・ゼニア」「ロロピアーナ」と並ぶ、世界3大ミル(毛織物生産企業)に数えられる最高級毛織物メーカーで、SUPER120’S〜200’Sクラス原料を使用する織物がメインです。


「グアベロ」は1815年創業の老舗で、200年以上に渡る膨大なアーカイブスから、最新の流行を取り入れる匠の技で、世界中のトレンドセッター達に絶大な信頼を得ています。


「マルラーネ」のグループ内での立ち位置としては、「グアベロ」のセカンドラインとして、トレンドのエッセンスを取り入れながら、比較的安価であり、多くのユーザーにイタリア素材の門戸を開けるきっかけを担うポジションです。

ブランドの歴史

数百年の歴史を持つイタリア服地メーカーが多数ある中では、「マルラーネ」は1952年の創業であり、それほど長い歴史を持ってはいません。


元々、イタリアの素材メーカーとしては、堅実でコストパフォーマンスの高い「ものづくり」には定評がありましたが、マルゾットグループに入ることによって、資金繰りの懸念無く、原毛調達能力が大きく向上したことで、従来から持っていた技術に磨きが掛かり、より高品質で安価な商品の生産が可能になっています。


また、歴史を持つ素材企業グループに入ることで、過去の膨大な資料を共有出来る様になり、次々と新しいアイディアが生まれ、それまで充分では無かったデザイン分野でのシナジー効果が発揮され、企業価値が大きく向上しています。


トレンドを加味したウール素材を、安価に生産出来る強みを活かし、素材メーカーでありながら、注文が入ったものだけを生産するのではなく、自社リスク在庫を注文に先行して生産する、テキスタイルコンバータ機能(日本で言うところの問屋機能)が有るのも「マルラーネ」の特徴です。


今、売れ筋の商品をいち早く手配したい、世界中の商品バイヤーにとって、生地生産に要する数ヶ月の期間が必要無く、縫製期間だけで、商品を店頭に投入できるメリットは計り知れません。

織物の基本知識

「マルラーネ」の品質の高さを理解するために、役に立つ織物の基本的な知識を見ていきましょう。


素材としてのテキスタイル善し悪しは、多くの複合的な要素で構成されています。


基本として、「どれくらいの太さの糸」を、「どれくらいの密度」で、「どんな組織(織り方)」をするか?をおさえる事です。


糸の太さ

太い糸を使えれば、ザックリとしたテキスタイルに仕上がり、細い糸を使用すれば繊細な仕上がりになります。


スーツ地としては、主に2/48から2/80程度の糸番手が使われます。数字が大きくなるほど細い糸を表します。2/80のことを80双糸(そうし)と読みます。


羊毛は2本の糸を撚(よ)って(ねじり上げるイメージです)、織物に用いられます。


双糸にする事により、安定した均一な太さになるため、一般的なウール素材に使われています。


1本の糸を撚って使う、単糸使いの織物もあります。1/30と表記して30単糸と読みます。


1/30と2/60は同じ太さになります。双糸と比較して均一感が劣る事を逆手に取り、織物に表情を加える事に多く用いられます。


羊毛の原料グレード(繊細さ)によって、糸の太さに用いる事の出来る限度があります。


細番手の糸を製造するのには、原料の繊細さが必要になります。


当然原料が繊細ならば、コストは高くなります。


本来織物は芸術では無く営利目的で製造されるので、よりコストの安い羊毛原料を使用して、如何に細い糸を作成するかに力を集中します。


しかし上質な素材は、これらのセオリーを無視して製造されています。


本来であれば2/80番手の製造が可能な上質原料を用いて、2/48や2/60番手を製造にすることにより、「滑らかさ」「上質な手触り」を表現しています。


同じウールの生地でも、中国産を中心とした普及品とブランド生地の差は、このような違いがあります。


よく誤解されるのは、「super100’」や「super120’」を糸の細さと解説されている事です。


これらは原料の繊細さを表していて、糸の太さではありません。中身は多くの差が存在していて、同じ「super100’」と表示されていても、個別に比較すれば大きな優劣が存在します。


数値的には同じ繊細さを持つ原料でも、羊毛本来の持つ「クリンプ」と呼ばれる縮れが、織物の仕上がり品質に大きな影響を与えます。


上質なクリンプを持つ原料は、弾力性に富み、優れた張りコシとシワからの回復力に繋がります。


上質なウールは、着用した後で適正にハンガーに掛けておけば、シワが自然に回復するのは「クリンプ」が大きな役割を果たしています。


密度

「打ち込み本数」と呼ばれています。


決められた範囲に、縦横どれくらいの糸が入っているのか?ということが、生地の仕上がりには、大きく影響します。


「打ち込み本数」は、少なければソフトになる反面、特にメンズでは必要な張りコシが無くなり、物性的な問題(縫い目から裂ける等)が出ます。


逆に「打ち込み本数」が多ければ、張りコシが出て物性的な問題も解決出来ますが、全体的には固くなってしまいます。


上質なブランド素材は、「打ち込み本数」が多くなっても、使う糸の上質さで固くなる事が無く、「張りコシ」がありながら、「しなやかさ」を出す事を両立させています。


「打ち込み本数」は、コストに直接反映されます。


「打ち込み本数」が多くなれば、同じメーター数を織り上げるのに時間が掛かるためです。


コストを考えれば、打ち込むスピードが速ければ速いほど、生産効率は上がります。


しかし、早いスピードで糸を飛ばせばテンションが掛かり、羊毛の持つ素晴らしい特性のクリンプが持つ効果は減少してしまいます。


上質なブランド素材は、生産効率が落ちてコストが上昇しても、クリンプ特性に最適なテンションに収まるスピードを選択することで、高い品質を生み出します。


織り組織

大きく分けて、「平織り」「綾織り」「繻子(しゅす)織り」があります。


平織りは、主に春夏に使われる清涼感が出る軽量な織物で、最も基本的な織り方であり、使っている糸の品質がダイレクトに出ます。トロピカルウールと呼ばれます。


同じトロピカルウールでも、上質なブランド素材は、原料の良さと適正な「打ち込み本数」によって、中国を中心とした普及品とは確実に大きな差が出ます。


伝統的な春夏素材として、上質なブランド素材は「綾織り」を用いる事があります。


「綾織り」ではトロピカルウールと比較して、織物に重量が付くため、細番手の糸が使われます。清涼感を持たせるため、撚糸回数を増加させた強撚糸を使う事もあります。


どちらの手段も、コストが掛かる手法です。


「綾織り」「繻子織り」は比較的重量を付けやすいため、主に秋冬素材として使われます。


コストを考えれば、太番手糸をシンプルな綾織りで仕上げる事で、秋冬の利用に使える生地には仕上がります。


上質なブランド素材は、敢えて品質の高い細番手糸を用いて、織り組織に変化を持たせることによって、秋冬の利用に使える重量感の構築をします。上質な原料糸をたっぷり使うので、必然的にコストは高くなります。

マルラーネ素材の特徴

「マルラーネ」は、イタリア素材の中では、クオリティと比較して安価に提供されています。


ウール素材は、SUPER 100’S〜120’Sクラスの原料を中心に構成されているため、イタリア素材特有の「しなやか」で「ソフト」な着心地と、上品なウールの持つ艶が楽しめます。


実用的なのも「マルラーネ」の特徴で、高い耐久性を持つ素材が多く、防シワ対策が施された素材や、撥水・防汚・ストレッチ等の機能を持つ素材も積極的にリリースされています。


どれも価格以上の価値があり、ビジネススーツ用素材として、極めてコストパフォーマンスが高く人気が有ります。


イタリア素材の良さを、実用的な良さを加味しながら、気軽に楽しめるのが「マルラーネ」は、初めてのオーダースーツ素材としても最適です。

秋冬のマルラーネ素材

CORDURA Combat Wool(コーデュラ コンバットウール)

「CORDURA」は、デュポン社(DuPont de Nemours, Inc.)が開発した特殊ナイロンを使用した生地素材や糸のインビスタ社登録商標です。


軽量で摩擦や引裂強度に優れている特性が有り、アウトドアからミリタリーへと用途が広がりました。


防弾チョッキに使われている繊維も、これを発展させたタイプです。


米軍の戦闘服素材として、綿とコーデュラの混紡糸を使った素材が使われてきましたが、同じコンセプトで軽く丈夫なウール素材の制服ニーズが米軍から出てきて、コンバットウールの開発はスタートしました。

通常ウールと比較して格段な強度は、一般的な使用でも大きなメリットが有ります。


たとえば、摩擦強度が10倍から14倍程度向上している事で、自転車通勤やリュックタイプの鞄を毎日使用する場合、同じ部位が摩擦して消耗する使い方をするユーザーには、大きなメリットが有ります。


それ以上に、普段の着用でシワになりにくく軽量で、タフに使っても安心です。


従来のイタリア素材には無かった特性を持つのが、「コーデュラ コンバットウール」です。


「CORDURA」はコーデュラを40%混紡したウールのスーツ地です。


一見すると、化学繊維を使っている強靱なスーツには見えません。


イタリア製らしい滑らかな風合いと光沢が備わった、実用的なスーツ素材です。


霜降り糸を使ったスーツ柄で、コーデュラを使った生産が行えるイタリア製生地は、「マルラーネ」だけの独占販売です。


Super100'S

「マルラーネ」の定番素材です。


18.5ミクロンの繊細な原料を使っているバランスの良い素材で、上質でありながら耐久性にも優れていて、日常的に使えるビジネススーツに最適です。


3シーズン着用出来る素材感で、価格以上のお得感があります。

ソリッドな色目が特徴的なスーツ地で、初めてのオーダースーツ用素材として最適です。

春夏のマルラーネ素材

SUMMER PROMINENT(サマープロミネント)

春夏スーツ地として人気があります。


厳選された原料を使った、糸の撚糸回数を大幅に上げることで表情をつくり、異なる糸番手を使う事で更に特徴的な表面感になり、それだけでなく通気性も良くなっています。


立体感があるだけで無く、サラッとした清涼感があり、ウール100%が本来持つ、シワからの回復力にも優れています。

高温多湿な日本の風土にピッタリのスーツ素材です。


麻に近い軽快感を持ちながら、フォーマル感を持ち合わせる素材は、夏用のオーダースーツに最適です。


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まとめ

「マルラーネ」は、ビジネスシーンに着用するスーツに最適な、メンズコレクションです。


利用しやすい価格を提示しながら、グループ内の情報網をフルに活かした、実用的な機能やトレンドを解りやすく盛り込んでいて、初めてのオーダースーツ素材としてもオススメです。


もちろん、イタリア生地らしい上品な艶や、柔らかい着心地も充分楽しむ事が出来ます。