STYLING GUIDE

美しいドレープが魅力の「ロロ・ピアーナ」は初めてのオーダースーツにもオススメ

投稿日時:2022.03.25 16:18:18

「Loro Piana」はロロ・ピア―ナと読み、省略して「ロロ」と呼ばれる事も多いブランドです。


「Ermenegildo Zegna」と共に、イタリア素材を代表する2大ブランドで、メンズ素材として凜とした佇まいを持ちながら、しなやかで柔らかい、選び抜かれた高級原料を惜しみなく使用する事で表現する本物感は、多くの共通点が有ります。


「ゼニア」と同様に、世界中の有名テーラーには必ずと言って良いほど取り扱いが有り、長年に渡りトップブランドの一つとして君臨しています。


どちらも上質な両者の違いを噛み砕いて説明すれば、「ゼニア」が「プライドが高い正統派」の要素を多分に持ち合わせるのに対して、「ロロ・ピアーナ」は「高貴で粋な色気」が溢れている事です。


そのハイブランドとして一貫した姿勢に共鳴した、ルイ・ヴィトンを擁するLVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトングループは、2013年にロロ・ピアーナの発行済み株式の80%を取得して、グループ傘下にしました。


LVMHグループ傘下には「LOUIS VUITTON」の他、「Dior」「GIVENCHY」「FENDI」「CELINE」等の蒼々たるブランドが並びますが、「Loro Piana」もその一つです。


最高のパートナーを得た「Loro Piana」は、伝統と格式を一層高度に磨き上げ続ける事で、その名声は留まるところを知りません。

ブランドの歴史

「ロロ・ピアーナ」は、創業者のピエトロ・ロロ・ピアーナ氏が1924年に創業したことで、名前がそのままブランド名になっています。


ロロ・ピアーナ家としては、それ以前の1800年代初頭から北イタリアのトリヴェーロで、ウール織物商として既に活動していました。


ピエトロ・ロロ・ピアーナ氏が、理想のウール織物を求めて、商いだけでは無く織物の製造を始めて、会社を設立したのが1924年の事です。


1941年になると、創業者の甥にあたるフランコ・ロロ・ピアーナ氏が事業を率いて、高級ウールを中心とした、供給元としての地位を確立しています。


創業当時から追求している「卓越性の追求」という理念は、6世代に渡って現代に引き継がれていて、原毛から紡績・織り工程から整理工程に至るまで一貫生産を行っている希有なメーカーであり、各工程を厳格な基準に基づいて徹底管理されることで、ロロ・ピアーナ品質は生み出されます。


LVMHグループもロロ・ピアーナのブランド理念を尊重していて、創業者一族に一定の株式保有を認めており、資金・後方支援に徹する姿勢で、大企業の一角になった今でも、クラフトマンシップによる品質と信頼は揺るぎません。


羊毛原料に対する拘りが一際強く、繊細で高品質な原毛調達力は世界有数に優れていて、現在のイタリア生地の「繊細で軽く柔らかい」というイメージの定着に、ロロ・ピアーナは大きな役割を果たしています。

織物の基本知識

「ロロ・ピアーナ」の良さを理解するのに、役に立つ織物の基本的な知識を見ていきましょう。


素材としてのテキスタイル善し悪しは、多くの複合的な要素で構成されます。


基本として、「どれくらいの太さの糸」を、「どれくらいの密度」で、「どんな組織(織り方)」をするか?ということです。


糸の太さ

太い糸を使えれば、ザックリとしたテキスタイルに仕上がり、細い糸を使用すれば繊細な仕上がりになります。


スーツ地としては、主に2/48から2/80程度の糸番手が使われます。数字が大きくなるほど細い糸を表します。2/80のことを80双糸(そうし)と読みます。


羊毛は2本の糸を撚(よ)って(ねじり上げるイメージです)、織物に用いられます。


双糸にする事により、安定した均一な太さになるため、一般的なウール素材に使われています。


1本の糸を撚って使う、単糸使いの織物もあります。1/30と表記して30単糸と読みます。


1/30と2/60は同じ太さになります。双糸と比較して均一感が劣る事を逆手に取り、織物に表情を加える事に多く用いられます。


羊毛の原料グレード(繊細さ)によって、糸の太さに用いる事の出来る限度があります。


細番手の糸を製造するのには、原料の繊細さが必要になります。


当然原料が繊細ならば、コストは高くなります。


本来織物は芸術では無く営利目的で製造されるので、よりコストの安い羊毛原料を使用して、如何に細い糸を作成するかに力を集中します。


しかし上質な素材は、これらのセオリーを無視して製造されています。


本来であれば2/80番手の製造が可能な上質原料を用いて、2/48や2/60番手を製造にすることにより、「滑らかさ」「上質な手触り」を表現しています。


同じウールの生地でも、中国産を中心とした普及品とブランド生地の差は、このような違いがあります。


よく誤解されるのは、「super100’」や「super120’」を糸の細さと解説されている事です。


これらは原料の繊細さを表していて、糸の太さではありません。中身は多くの差が存在していて、同じ「super100’」と表示されていても、個別に比較すれば大きな優劣が存在します。


数値的には同じ繊細さを持つ原料でも、羊毛本来の持つ「クリンプ」と呼ばれる縮れが、織物の仕上がり品質に大きな影響を与えます。


上質なクリンプを持つ原料は、弾力性に富み、優れた張りコシとシワからの回復力に繋がります。


上質なウールは、着用した後で適正にハンガーに掛けておけば、シワが自然に回復するのは「クリンプ」が大きな役割を果たしています。


密度

「打ち込み本数」と呼ばれています。


決められた範囲に、縦横どれくらいの糸が入っているのか?ということが、生地の仕上がりには、大きく影響します。


「打ち込み本数」は、少なければソフトになる反面、特にメンズでは必要な張りコシが無くなり、物性的な問題(縫い目から裂ける等)が出ます。


逆に「打ち込み本数」が多ければ、張りコシが出て物性的な問題も解決出来ますが、全体的には固くなってしまいます。


上質なブランド素材は、「打ち込み本数」が多くなっても、使う糸の上質さで固くなる事が無く、「張りコシ」がありながら、「しなやかさ」を出す事を両立させています。


「打ち込み本数」は、コストに直接反映されます。


「打ち込み本数」が多くなれば、同じメーター数を織り上げるのに時間が掛かるためです。


コストを考えれば、打ち込むスピードが速ければ速いほど、生産効率は上がります。


しかし、早いスピードで糸を飛ばせばテンションが掛かり、羊毛の持つ素晴らしい特性のクリンプが持つ効果は減少してしまいます。


上質なブランド素材は、生産効率が落ちてコストが上昇しても、クリンプ特性に最適なテンションに収まるスピードを選択することで、高い品質を生み出します。


織り組織

大きく分けて、「平織り」「綾織り」「繻子(しゅす)織り」があります。


平織りは、主に春夏に使われる清涼感が出る軽量な織物で、最も基本的な織り方であり、使っている糸の品質がダイレクトに出ます。トロピカルウールと呼ばれます。


同じトロピカルウールでも、上質なブランド素材は、原料の良さと適正な「打ち込み本数」によって、中国を中心とした普及品とは確実に大きな差が出ます。


伝統的な春夏素材として、上質なブランド素材は「綾織り」を用いる事があります。


「綾織り」ではトロピカルウールと比較して、織物に重量が付くため、細番手の糸が使われます。清涼感を持たせるため、撚糸回数を増加させた強撚糸を使う事もあります。


どちらの手段も、コストが掛かる手法です。


「綾織り」「繻子織り」は比較的重量を付けやすいため、主に秋冬素材として使われます。


コストを考えれば、太番手糸をシンプルな綾織りで仕上げる事で、秋冬の利用に使える生地には仕上がります。


上質なブランド素材は、敢えて品質の高い細番手糸を用いて、織り組織に変化を持たせることによって、秋冬の利用に使える重量感の構築をします。上質な原料糸をたっぷり使うので、必然的にコストは高くなります。

ロロ・ピアーナ素材の特徴

「ロロ・ピアーナ」の特徴は、一目見ただけで解る「イイもの感」です。


普段はそれほどファッションに対して興味が無い人にも、「ロロ・ピアーナ」が高級・高品質な織物である事を感じさせます。


見るだけで無く、実際に触れた時の手触りは極上で、しっかりとしているのに柔らかく、なめらかなタッチは見た目以上の驚きがあります。


スーツで着用すると、その良さは一層際立ちます。


身体の動きに滑らかに対応して、実際の重量よりも遙かに軽い着用感と、美しいドレープ(落ち感)がシルエットを造りだし、ジャストサイズのオーダースーツに最適です。


上質な原料だけを使い、時間を掛けて丹念に製造された素材だからこそ出てくる凄みを、「ロロ・ピアーナ」で体験することが出来ます。


上品な粋と色気は、決してこれ見よがしの主張では無く、群を抜いた高品質に裏打ちされることで実現されています。

秋冬のゼニア素材

フォーシーズンズ(FOUR SEASONS)

厳密には秋冬素材では無く、名前の通り4シーズンに渡り、年間を通して着用が可能です。


中肉と呼ばれる肉感で、秋冬物よりも地が薄く、春夏物よりも地が厚い秋冬と春夏どちらでも着られる素材感で、表面はクリアに仕上げられています。


一般的なオールシーズンタイプの組織は、2/1と呼ばれる2本の糸が生地の表に出て、1本が裏にまわる、綾織りタイプが主力です。


ロロ・ピアーナの同タイプは、極細原料を用いた極細番手の糸を、2/2と呼ばれる2本の糸が表にでて、2本が裏になる綾織りタイプが主力です。


極細原料を用いた極細番手の糸では原料コストが高価なため、目付(生地の重さ)がつくことを嫌い、通常は春夏用の軽量素材に用いられますが、ロロ・ピアーナのフォーシーズンズでは、贅沢に目付の付く2/2の綾織り組織が多くなっています。


1年を通じて、最も汎用性の高い一着用に企画されている商品ですが、厳しい日本の冬にはコートを着用する事が前提で、高温多湿な日本の夏には夏用の平織り素材(トロピカルウール等)の方が快適なのは確かで、この4シーズンはイタリア基準である事も知っておいて下さい。


ロロ・ピアーナらしい、高品質原料がもたらす軽い装着感と柔らかさを有しながら、同社の素材の中では控えめな程よい光沢感があり、シーズン通して着られる利便性と耐久性を持ち合わせていることから、初めてのオーダースーツにも最適で人気が有ります。

素材の特徴として、繊細で極細な高級原料を使用した糸を、贅沢に打ち込んだ良さがあります。


霜降り糸と同系色でトーン違いの糸を組み合わせる事により、奥行きのある多彩なトーンを品良く表現されていることが多く、一部の組織を変更する事で同じ糸を使用しながらストライプ系の縦変化を表現するなど、シンプルで飽きの来ない、それでいて愛着が沸く表現力は、流石はロロ・ピアーナです。

生地表面の表情はソリッドに仕上げられていて、毛足が短く刈り込んであり、そこから放たれる上品な艶の魅力と、軽快な着用感のある繊細さの中に、実用的な力強さを持ち合わせています。


多くの季節に着用出来る、その利便性をフルに活用する愛用者が広がっていて、リピーターや口コミ参入者が多く、販売は毎年増加しています。


ソフトタッチ(SOFT TOUCH)

「ソフトタッチ」は、現代の秋冬スーツ地としてのニーズに応えた、比較的目付が軽量に仕上げられた素材感です。


具体的なイメージとしては、クリアな仕上げになっている前述の「フォーシーズンズ」の毛足が出ているバージョンですが、表面を引っ掻いて毛足を出したのでは無く、織った生地を何度ももみ洗いを繰り返し行う事で、目が詰まった極上の柔らかい風合いと、表面の自然な起毛感がもたらされています。


同じタイプの仕上げ工程を行っている、秋冬素材のフラノと比較して、極細の糸を使用していることで、軽量でシャープな装着感と質感を持ち、真夏を除いた3シーズン着用出来る素材として人気が有ります。

非常にコストの掛かる、霜降り糸と同系色の濃淡を撚った杢糸使いが、表情に奥行きをもたらしています。


柔らかい極上の起毛感が、独特の上質なウール本来の艶を引き出しています。


この艶が、肩や袖にかけての柔らかいドレープ性と相まって、魅力的なオーダースーツを構成します。

春夏のロロ・ピアーナ素材

Super130'S

Super130'Sと記述して、「スーパー130」と呼ばれています。


先の基本知識でも書きましたが、この表記は糸の細さ(番手)ではなく、使用されている原料の、繊維の細さを表しています。


スーパーの後の数字が大きいほど、繊細な原料を使用しています。


当然ですが、数字が大きくなれば原料価格は高くなります。


Super130'Sは、17.0ミクロンの羊毛原料を使用しています。


ミクロンという単位は、直接的なサイズを表しているため、数値が小さいほど細く上質な原料ということになります。


男性用のスーツ地は、着用中に直接的に力が掛かる等の負荷が避けられない為、一般的に用いられる原料としては、究極に近いグループになります。


17.0ミクロンという数値だけ見てもピンと来ませんが、繊細さで定評のある、コートやニットに使われる最上級のカシミア原料は、15ミクロン前後が多くなっていて、一般的な上質ウールとされているスーツ地は20ミクロン以上が多い事と比較しても、その繊細さが解ります。


原毛の繊細さを前面に出したSuper130'Sは、ロロ・ピアーナの自信が表されています。


豊かなクリンプを持つ原料を使用することで、上質な柔らかさと回復性に優れています。

Super130'Sには、春夏物だけでなく、秋冬物も展開しています。


特に春夏物は、ソリッドな表面感の中に、しっかりと詰め込まれた原料の良さから来る、本物特有の上質な光沢感が楽しめます。

ジャストサイズに仕立てられたオーダースーツの軽い着用感は、上着を着ていることを忘れさせます。


ジランダードリーム(ZELANDER DREAM)

「ZELANDER」は、オフィシャルな記述はありませんが、ニュージーランド原産を表す「zealander」からの造語だと推察されます。


そのままストレートに使用しないで、A抜きの「ZELANDER」にしたのは、商標などにまつわる大人の事情だと推察されます。


言うまでも無くニュージーランドは、良質な羊毛原料を世界に供給する指折りの産地で、その中でも良質なメリノウールを使用していることを、前面に打ち出しています。


「ZELANDER」はロロ・ピアーナの定番秋冬素材として、多くのユーザーに親しまれてきました。ロロ・ピアーナのシリーズの中では比較的手に取りやすい価格で提供されることが多く、シワになりにくく回復しやすい特徴を持ちながら、ロロ・ピアーナらしい適度な張りコシとしなやかさ・光沢感を持つのが、その理由です。

「ZELANDER」の良さをそのままに、平坦で高級感の出しにくい春夏物に落とし込んだのが「ZELANDER DREAM」です。


従来の糸の撚り方向(S撚り)とは逆に撚りをかけた(Z撚り)、撚糸回数を大幅に増やした糸を使用しています。


本来の単糸はZ撚りで、双糸にする時に逆のS撚りにすることで、フンワリとしたウールらしい糸に仕上げる事が通常の工程ですが、単糸本来のZ方向に双糸にするときに撚りを掛ける事で、より撚糸数の多い強撚糸に仕上げます。


タオルをギュッと絞った時に、更にもう一段階絞る事で、均一な表面だったのが、ゴテゴテしてくるイメージです。

強撚糸特有の立体感と清涼感を持ち、平織りの織物でも豊かな表情になります。


ドレープに優れていて、ゴム系繊維等の伸びる繊維を使わない天然繊維100%でも、身体に馴染む自然なストレッチ性を有し、ロロ・ピアーナらしい原料の良さから由来する独特の艶感を、手軽に楽しむ事が出来ます。

まとめ

「ロロ・ピアーナ」の素材を使ったスーツは、オーソドックスなスーツの世界に、品の良いラグジュアリーを持ち込みます。


小手先の手段を用いるのでは無く、手間やコストを度外視してでも、本質をどこまでも追究する姿勢に、世界中の違いのわかるユーザーが共感している「Loro Piana」。


ジャストサイズのオーダースーツこそ、イタリアの最高峰を楽しむのに最適の手段です。