ピンホールシャツとは?シーンごとの合わせ方やピンの種類を紹介
目次
スーツスタイルの印象を決めるポイントの1つに、立体感があります。
立体感のポイントは、Vゾーンにあります。
Vゾーンに立体感がある事で、より男の懐の深さを演出するだけでなく、美しい佇まいを醸し出します。
襟元に立体感を出す工夫は、先人達によって色々な手段が考えられてきました。
その手段の1つとして、ワイシャツの襟に使うカラーピンというアクセサリーがあります。
色つきのピンという意味ではなく、「襟のピン」という意味です。
ネクタイを裏から持ち上げて、Vゾーンを立体的に演出するものです。
さりげない男の色気を首元で支える、「縁の下の力持ち」カラーピン。
襟に専用の穴が無いワイシャツには使えない、特別な物です。
今回は、カラーピンを通す専用の穴を襟に持つ、ピンホールシャツについて解説します。
ピンホールシャツとは?
ピンホールシャツは、襟にアイレットと呼ぶ穴が開いていて、アイレットカラーシャツと呼ばれる事もあります。
ピンを穴に通してネクタイのノット(結び目)を、裏から持ち上げる構造になっているシャツです。
カラーピンという呼び方だけではなく、カラーバーという呼び方もあります。「襟の棒」ということですね。
まずは、ピンホールシャツに欠かせないカラーピンの歴史を見てみましょう。
カラーピンの歴史
カラーピンが始まった年代の詳細などについては不明ですが、古くから由緒正しいクラシカルな装飾品として定着しており、特にイギリスでは広く一般化しているメンズアクセサリーアイテムの1つです。
その昔は、今に比べてネクタイのボリューム感は、芯地を入れるノウハウが確立されておらず、シルク素材自体の厚さも無かったために貧弱で、立体感を出す事が困難だった事情がありました。
そこで、ネクタイ自体を裏から持ち上げて立体感を演出するパーツとして、カラーピンは生まれました。
結び目が緩まないようになる効果もあり、広く愛されて定着するに至ります。
昨今はクラッシック回帰の影響もあり、ファッション感度の高いヨーロッパの洒落者達に注目されているトレンドアイテムの1つで、日本でも徐々に広がりを見せています。
ピンホールシャツの特徴
棒状のピンを横に通して立体感を作る構造のため、襟の開き具合は狭くなっています。
立体感だけでなく、襟元を引き締める効果があり、ネクタイのノット(結び目)はコンパクトな方が適しています。
ピンを使う前提のシャツで、無しの状態での着用はしません。
装飾アクセサリーの金属感を適度に見せる事で、ドレッシーなイメージを演出します。
顔が小さめで、首も長いタイプの方には特にオススメのシャツです。
知的に見えて、好感度アップが期待出来ますよ。
タブカラーシャツとはどう違う?
棒状のアクセサリーを使わないだけで、タブカラーシャツも狙う効果は同じです。
左右の襟からタブ(紐)が出ていて、繋ぐことによりネクタイを裏から支えて立体的に見せます。
襟元の引き締め効果をもたらしシャープさを演出できます。
接続方法の違いから、大きく分けて2つのタイプがあります。
「ループタブ」と呼ばれる、片側がループになっていて、もう一方がループ状になっているタイプと、「ホックタブ」と呼ばれるスナップボタンが付いているタイプがあります。
ピンホールシャツ同様に襟の開き具合は狭くなるので、ネクタイのノット(結び目)はコンパクトな方がオススメです。
ピンホールシャツに比べると、ドレス感は若干薄くなってカジュアルな印象になります。
合わせるピン種類
ネクタイの下から棒状のパーツを利用して持ち上げ、Vゾーンに立体感を構成する方法は複数有ります。
それぞれ形状は異なりますが、どれもデザインはシンプルでベーシックなのが基本です。
ベースはシンプルなデザインですが、両端から装飾用のチェーンが付いたタイプもあります。
代表的な色は、シルバー・ゴールドです。
普段使いしやすいのは、シルバーです。華やかになりすぎず主張は抑えめですね。
ゴールドは華やかになる為、職場環境やTPOを考慮して使いたいです。
クラッシックな風情があることから、トラッドな着こなしをベースに置くとカッコイイです。出来れば時計など他のアクセサリーと色を揃えると、より粋なお洒落を演出できます。
光沢感・艶感も印象を左右します。
ダークカラーの無地など控えめなネクタイの場合には、光沢感のあるタイプを使います。
柄やカラーで主張が強いタイプのネクタイの場合には、光沢感は抑え目なタイプを使います。
主張の喧嘩をしないバランスを保つことで、より印象的でお洒落なVゾーンの演出が出来ます。
カラーピン・カラーバー
棒状の形態で両端に金具が付いている「カラーピン・カラーバー」タイプは、襟に穴が開いている、ピンホールシャツ専用です。
襟に穴が開いていないタイプのシャツでは、これらのパーツの使用は出来ません。
端の金具を外して棒状の部分を露出させて、ワイシャツの襟に開いている穴に差し込み、ネクタイの下に通してから、もう一方の穴に通して金具を再度装着します。
カラーピンはシャツに付属しているパターンが多いのですが、自分の好みのカラーピンを追加購入する事で、装いの幅が広がります。
付属のピンに近い長さの物を選べばOKですが、あえて短いタイプを選んで、襟の見え方を意図的に変える演出をするのもいいでしょう。
安全ピン型カラーピン・カラークリップ
襟に穴が開いていない通常タイプのシャツで、同様の効果を得るアクセサリーパーツです。
襟があるワイシャツで、パーツの長さが両方の襟に届く寸法なら装着できるので、愛用のシャツに簡単に取り入れることが出来ます。
小さなパーツ1つで、普段着ているワイシャツの印象を大きく変えることが可能で、気分が変わって楽しいですよ。
ポイントとしては、襟の開きが抑えられたワイシャツを選んでください。
ホリゾンタルカラーの様な襟の開いたタイプは向きません。
レギュラーカラーやセミワイド程度のワイシャツが良いです。
「安全ピン型カラーピン」は、安全ピンの形状をそのまま大きくしたタイプです。
襟に刺すことによって両側を繋ぎ、ネクタイを裏側から持ち上げます。
カジュアルな雰囲気で襟元に個性が演出出来ます。
きちんと留めれば外れる心配が少なく安心ですが、同じシャツで繰り返し使用すると襟が痛むデメリットがあります。
パーツ自体に存在感があるので、お洒落上級者になるとタイドアップだけではなく、襟の開きが大きいボタンダウンシャツを、ノーネクタイでコーディネートする強者もいらっしゃいます。
「カラークリップタイプ」は、棒状の先端両側がクリップになっています。
左右の襟をそれぞれ挟み込むだけで、簡単に取り付け可能です。
安全ピンタイプと比較すれば、襟に与えるダメージが少ない反面、外れやすいので注意が必要です。
カラーピンの正しい付け方
カラーピンを付けない状態で、通常通りにネクタイを締めます。
カラーピンを装着するピンホールシャツの場合、襟の間隔が狭くなっているため、細いタイプのネクタイ(ナロータイ)との相性が良いです。
通常のネクタイなら、ノット(結び目)はコンパクトにしてください。
ネクタイを締めた後に、カラーピンをネクタイの下に通して留めます。
形を整えれば完成です。
カラーピンに装飾用のチェーンが付いているタイプは、ネクタイ締めた後にピンを「いきなり」付けるのではなく、ピンとチェーンの間にネクタイを通してから装着してください。
後でイライラすることなく、本来の形に美しく決まります。
シーンごとの合わせ方
ピンホールシャツは、いつものスーツに合わせてもVゾーンを立体的に演出出来て、華やかさが出ます。気軽に使えて「さりげないお洒落の演出」に最適です。
注意が必要なのは、華やかさがあることから使いたくなりますが、結婚式などのフォーマルな場には、適さないタイプのシャツであることも知っておいてください。
ビジネスシーン
出来るビジネスマン御用達のチョークストライプスーツは、力強さが有りながら品格あり人気が高いですよね。
しかしストライプの主張が強い為に、Vゾーンの演出に困ることが多いアイテムでもあります。
同系色のネクタイに白シャツというオーソドックスな組み合わせに、カラーピンで襟元に立体感を持たせることで、個性あるストライプに負けない存在感のバランスをとれば、お洒落感が大幅にアップします。
ダブルブレストの大きめなピークドラペルに、締まって立体感のあるVゾーンの組み合わせは、抜群に格好いいですよね。
3ピースベストやジレを使った演出をすると、Vゾーンが狭くなるので、カラーピンを用いることにより立体感が増して、いいアクセントになり華やかさが増します。
ポイントは、オーソドックスでシンプルな構成にすることです。
たとえば、グレーの3ピースに白シャツでネイビーのソリッドタイのスタイルの中に、カラーピンを取り入れることで「こなれ感」のあるコーディネートになります。
カジュアルシーン
スーツではなく単品ジャケットを使って、ビジネスカジュアルのコーディネートに華を添えます。
クレリックシャツでピンホールタイプシャツになっているタイプは、気軽にオフィスカジュアルを演出出来るアイテムです。
ネクタイ自体が前面に出ないように、ジャケットの素材感やカラーに合わせて抑え目にしてください。カラーピンとクレリックシャツで演出するVゾーンの華やかさが、品良く引き立ちます。
結婚式など
結婚式に適したワイシャツは、白無地の綿です。
レストランウェディング等の少々砕けたカジュアル寄りの結婚式の場合でも、淡い色限定のサックスブルーまでです。
フォーマルな場所で着用するシャツには、装飾を抑えたエレガントさがあった方が良いです。ボタンダウンやタブカラーはカジュアル寄りで適していません。
同様にピンホールやボタン等の装飾がされていない、ベーシックなデザインが最適です。
前立てが付いているシャツも、スポーティーさが出るので出来れば避けたいですね。あっても幅は3cm強程度までです。
結婚式の二次会・パーティーなどの華やかなシーンには、アクセントとしてピンホールシャツとカラーピンの華やかさで、気分を盛り上げる演出をしましょう。
ピンホールシャツでよくあるQ&A
ピンホールシャツで、よくある質問をまとめてみます。
ピンホールシャツのピンを装着しないで、ドレスシャツとして着るのは有りですか?
無しです。
ピンホールシャツは、カラーピンを装着する前提で製造されています。
カラーピンを装着してコンパクトにする仕様ですから、装着しないと「だらしなく」襟元が開く感じになります。
襟に穴が開いた状態を露出することになり、お洒落が台無しですね。
ピンホールシャツに付属で付いてきたピンを紛失しました。ピンだけで販売していますか?
脱いでいる時には、シャツと分離する宿命があるカラーピンの紛失。
実は意外と多い、ピンホールシャツ「あるある」です。
付属していたズバリがあるのかは解りませんが、カラーピンのデザインに大きな違いは無く、好みのものが選べるくらい販売していますよ。同じくらいの寸法のタイプを選べば、違和感無く装着できます。心配な方は事前にお手元のカラーピンのサイズ、測っておいても良いかもしれませんね。
ピンホールシャツで、ネクタイを緩めた時にピンはどうすれば良いですか?
ネクタイを緩める場面がある場合はピンホールシャツを着ていかない選択がベストです。
片方に挿したままブラブラさせることや、ピンを外して穴あきの襟が表に出るのは避けましょう。
カラークリップタイプや安全ピンタイプなど、普通のシャツに装着するタイプを選ぶのも良いですね。
まとめ
胸元を立体的に彩り、高級感をもたらすピンホールシャツ。
スーツを着こなすコーディネートに、確実に変化を出してくれます。
襟から、ごく僅かに出る装飾性は、数少ないメンズに許された歴史あるアクセサリーです。
クラシカルでエレガントな印象を気軽に構築出来るピンホールシャツは、初めての方にこそ積極的にオススメしたいアイテムです。
ピンホールシャツに限りませんが、シャツに大切なのはフィット感です。
大きければ格好悪いし、小さければ窮屈で快適さがありません。
体型に合わせて様々な部分のサイズを自由に変えられるオーダーシャツは、スマートなシルエットを快適な着心地と併せて実現出来ますよ。