ウィングカラーシャツとは?着用シーンとマナーを解説
目次
結婚式などで、特徴的な襟のシャツを着ている方を見たことはありませんか?
おめでたい席・お祝いの場など、結婚式や披露宴等の主に華やかなシチュエーションで、多く着用されるのがウィングカラーシャツです。
公式行事や記念式典、卒業式で校長先生が着用している事もあります。 歴史や格調を大切にする、クラシックコンサート演奏時の衣装や社交ダンスにも多く用いられます。
一目でフォーマルとして認識される、歴史に裏打ちされたアイコンとしての強さが、ウィングカラーシャツにはあります。
ウィングカラーシャツの、着用の仕方からマナーまで解説します。
ウィングカラーシャツとは?
ウィングカラーシャツとは、名前(ウイングwing)の通り、襟の先端を鳥の翼の様に小さく折り返したシャツです。 襟が首周り全体を包む様に立ち上がって、襟先だけが前に折り返される仕様になっています。
立ち上がった襟であることから、「襟高」「立襟」シャツと呼ばれる事もあります。
日常に着るワイシャツとは、襟の形が大きく異なりますので目立ちますよね。
ワイシャツの範疇だけではなく、メンズの礼装品の中でも大変フォーマルに分類されるアイテムです。 結婚式で新郎がタキシードを着る時に着用するシャツの認識が強いですが、ゲストが着用しても全く問題ありません。格式高い着こなしになりますよ。
ウィングカラーシャツに最もマッチするネクタイは蝶ネクタイです。 ウィングカラーシャツは、襟の折り返しが小さいために、ネクタイを固定する襟としての役目は果たせません。そのため、首の真後ろに「輪っか」が付いています。蝶ネクタイを装着する時に、あらかじめ通す事で装着中にズレてカラーから外れる事を防ぎます。
ウィングカラーシャツの種類
ウィングカラーシャツは、大きく分けて以下の3種類があります。
イカ胸
胸の部分に「よだれかけ」の様な、芯の入った素材で胸当てが縫い合わされたタイプです。 正面から見ると、首の幅よりも若干大きめの巾で、シャツの上から首の後ろで結び、前に垂らした感じのデザインになっている形状になっています。これを「するめ」「いか」と携わるプロ達が呼んだことから、「イカ胸」という名前が定着しました。
胸の別素材は単なる装飾ではなく、勲章をガッチリ付けるのに適したアイテムとして誕生したルーツがあります。そのため、特にオフィシャルでフォーマルな場面での着用に適しています。
主に使われるのは、夜の時間帯の礼装用です。
燕尾服着用なら「イカ胸」タイプのウィングカラーシャツを選択してください。
ヒダ胸
首よりもやや大きめの巾で、胸に1cm弱のプリーツが外に開くように並んでいるタイプのウィングカラーシャツです。
イカ胸と比較すれば、ヒダ胸は目にする機会が多いウィングカラーシャツですね。
モーニングやタキシード等に着用される礼装品で、朝から夜まで装着する時間帯を選びません。 余談ですが、タキシードはアメリカの呼び方です。イギリスではディナージャケットと呼ばれています。
プレーン
最もオーソドックスなウィングカラーシャツです。 通常のシャツに仕様が近く、ボタンを隠す比翼が付いていたり、ポケットが無かったりする違いはありますが、襟の形以外は大きな違いがありません。
ゲストで出席する結婚式に略礼装でのウィングカラーシャツは、このタイプがオススメで、ダークスーツに蝶ネクタイをするコーデにも使い回しが効きます。
礼装のルールやマナーは時代と共に変化しますが、基本にあるのは中世ヨーロッパの支配階級・貴族社会で育まれたものが一般化したものです。
ボタンを隠したりポケットを付けたりしないのは、フォーマルな場面では決められたもの以外は極力装飾をしない、という考え方が根底あるからです。
シャツは下着扱いで、下着のボタンを見せる事は避けたい事から、スタッズボタン(正式にはスタッドボタン)と呼ばれる、ボタンを隠すアクセサリーもあります。
袖口はダブルカフスになっている場合が多いです。 袖口を折り返して二重になっている仕様で、カフスボタン(正式にはカフスリンクス)を通す穴が開いていて、カフスボタンを通して固定します。カフスリンクスにも使用ルールがあります。(後述します)
ウィングカラーシャツに合わせるスーツは?
ウィングカラーシャツは、本来モーニングコート・タキシードに合わせるシャツです。 しかし、モーニングやタキシードを着る機会は少なく、昨今ではダークスーツでの着用が増えて、定着してきました。
畏まったオフィシャルな場面だけではなく、結婚式の二次会やパーティー等でも、華やかな場面で、黒を含むダークスーツに合わせるコーデが一般化しています。 イカ胸やヒダ胸は、フォーマル感が高くバランスをとることが難かしいので、プレーンタイプのウィングカラーシャツを選ぶと良いですね。
ウィングカラーシャツに合わせるネクタイは?
襟型に特徴があるために、ウィングカラーシャツに合わせるネクタイは、何を選べば良いのか不安になりますよね。フォーマル感を軸に考えていきます。
蝶ネクタイ(ボウタイ)
ウィングカラーシャツは、襟の形が特殊でフォーマル感が高い事が特徴です。
フォーマル感のあるネクタイが好相性になります。
最もフォーマル感のあるネクタイは、蝶ネクタイです。 必ず背テープの輪っかを通して着用して、着崩れを防いでくださいね。
蝶ネクタイは、本来夜に着用するアイテムとされています。 それ故に、昼間の着用を避ける方もいらっしゃいます。
ただ、カジュアルな要素を含む蝶ネクタイも多くありますので、昼間の着用にも積極的に推したいお洒落アイテムです。
通常のネクタイとは異なり、蝶ネクタイではVゾーンに多くの余白が発生します。
その対策として、ベスト・ジレをコーデしてください。 選択を間違えなければ(3ピーススーツのベストを着用するのは止めてください)、フォーマル度がアップしてお洒落感も大幅アップします。
アスコットタイ
アスコットタイも、ウィングカラーシャツに合わせるネクタイとしてオススメです。
昼間の正装用として、着丈の長いフロックコートやモーニングコートに用いるネクタイです。
英国のアスコット競馬場で、モーニングコートとウィングカラーシャツにアスコットタイの組み合わせが、正装とされていた歴史があります。
結婚式や二次会パーティーでも多く使われます。
スティックピンと呼ばれる、長い針状のピンを使って着用します。
アスコットタイを模したアスコットスカーフ・アスコットパフも、結婚式等で見かける事があります。本来のオフィシャルな席ではタブーとされていますが、通常の結婚式にゲストで装着するのには、何の問題もありません。
ウィングカラーシャツを着るのは、本来おめでたいフォーマルな場所ですよね。
フォーマルな場所で着用するネクタイのルールとして、黒色と動物柄はNGです。 黒色の例外は蝶ネクタイです。 黒は喪服を連想させ、動物柄は殺生を連想させるため、そぐわないと言われています。
ウィングカラーシャツの着用シーンとマナー
ウィングカラーシャツを着用する場合のマナーを知っておきましょう。
結婚式
モーニングコート
正礼装と呼ばれる、最も格式が高いものです。
午前や日中に着用します。
ヒダ胸タイプのウィングカラーシャツがオススメです。
白色のカフスボタンを付けます。白蝶貝のカフスボタンが正式なものです。
スタッズボタンも白を使用します。
モーニングコートは喪の場面でも使用されますが、その場合は白で無く黒オニキスのカフスボタンを使用します。
ディレクターズスーツ
正礼装よりも一つ格下になる礼装です。
モーニングコートの丈が短くなったタイプの上着に、グレーストライプのコールパンツ(コール天ではありません)にグレーのジレを合わせるコーディネートが一般的です。
ヒダ胸タイプのウィングカラーシャツがオススメです。
午前や日中に着用します。
白色のカフスボタンを付けます。白蝶貝のカフスボタンが正式なものです。
スタッズボタンも白を使用します。
タキシード
昼夜を問わず着用可能です。
ヒダ胸かイカ胸タイプのウィングカラーシャツがオススメです。
黒オニキスのカフスボタンを付けます。
スタッズボタンも黒オニキスを使用します。
本来はサファイヤやエメラルドを付けていましたが、高価なこともあり黒オニキスが定着しています。
燕尾服(テイルコート)
夕暮れからの正装です、
燕尾服には、白い蝶ネクタイ(ボウタイ)を合わせます。
イカ胸のウィングカラーシャツがオススメです。
ドレスコードにホワイトタイ着用とあれば、燕尾服着用で出席の意味があります。
白色のカフスボタンを付けます。白蝶貝のカフスボタンが正式なものです。
スタッズボタンも白を使用します。
二次会やパーティー
フォーマルスーツ
昼夜問わず、ゲストが着用するスーツです。
プレーンタイプのウィングカラーシャツがオススメです。
主役よりも華美にならない様にしてください。
カフスボタン等は、特にコードは無く自由に装着できます。
クラシック演奏会衣装や社交ダンス
タキシード・燕尾服
結婚式の項目と同様です。
ウィングカラーシャツのお勧めコーディネート
おめでたい席にぴったりの、華やかコーディネートをご紹介します。
シンプルコーディネート
白のウィングカラーシャツにブラックスーツは鉄板です。
黒の蝶ネクタイに黒のジレを加えて、白のポケットチーフを挿します。
シンプルでも特別感があるお洒落コーデですね。
蝶ネクタイは紺にするも格好いいです。
パーティーコーディネート
白のウィングカラーシャツにダーク系のスーツ(黒以外なら紺系がオススメです)を組み合わせ、柄物のジレや明るいトーンのジレを合わせます。パーティー感溢れる明るい色の蝶ネクタイとのコーデは如何でしょうか?ポイントは、ベストとジャケットが両方主張することを避けて五月蠅くならないように気をつけてください。
ウィングカラーシャツでよくあるQ&A
結婚式に着用するウィングカラーシャツに、色付きは駄目ですか?
華やか印象になる淡いカラーのピンクや、サックスブルーであれば、現在は許容範囲内だと思います。どんな色でもOKではなく、節度を保つことが大切です。 絶対に避けた方が良いのは、ビビットな原色です。
黒や濃紺は、二次会以降のカジュアルなパーティーならOKですが、結婚式・披露宴では避けた方が良いですね。
仕事でスーツに合わせるシャツとして、ウィングカラーシャツはアリですか?
決してオススメしません。
普段のビジネスシーンにおいて、ウィングカラーシャツは違和感しか出しません。
お洒落に大切なのは、TPOです。
結婚式に蝶ネクタイをする時には、普通のシャツでは駄目ですか?
蝶ネクタイをするなら、ウィングカラーシャツをオススメします。
普通のシャツでも蝶ネクタイは出来ますが格好いいのはウィングカラーシャツです。せっかくですから、この機会に入手されては如何でしょうか?
まとめ
普段は着用する機会が少ないウィングカラーシャツ。
結婚式やパーティー等だけでなく、機会があれば積極的に着用するのも、楽しいコーデになりますよ。
着用しても違和感が無い目安になるのは、女性がドレス等を着てドレスアップするシチュエーションです。ポイントを押さえて、後は自由に楽しみましょう。
シャツを着こなす大きなポイントは、ジャストサイズであることです。
自分の寸法にピタリと合ったウィングカラーシャツは、オーダーで可能になりますよ。
歴史を汲んだ「とびきり」の一着は、きっと装いが楽しくなります。