STYLING GUIDE

オーダースーツは返品できる?理解しておきたい基礎知識!

img

監修:堀省次(KITTE丸の内店 エリアマネージャー) / 投稿日時:2018.05.18 16:11:45


初めてスーツをオーダーする場合、いくつか心配なことはありませんか。特に「思ったようなスーツが出来なかったときはどうすればいい?」「オーダースーツでも返品できるの?」など、不安を感じることもあるでしょう。しかし、返品についての知識があれば、初めての人でも安心してオーダーできるはずです。今回は、「オーダースーツの返品」と、「万が一のときの対応方法」などについて解説します。

オーダースーツは返品できる?

注文者の体型に合わせて作るオーダースーツは受注生産品です。そのため、万が一完成品を返品しても、他の誰も着ることができないスーツになります。「オーダースーツは注文した人だけのもの」と考えると、返品は難しいことがわかるでしょう。


 


「返品できるケース」


極々まれな例ですが、誰が見てもメーカー側のミスが明確なときは、オーダースーツでも返品できる可能性があります。メーカー側の採寸、裁断ミス、生地に傷や汚れをつけてしまったなど、購入者がスーツを着用できない状態の場合です。しかし、注文者自らが採寸を行っている場合(パターンオーダーなど)では、もしもサイズ違いのスーツが出来たとしても、メーカー側の責任とはいいかねます。反対に、注文者は正しい数字を記入したのに、メーカー側が数字を読み間違えた場合、その事実を証明できれば返品の交渉も可能かもしれません。


裁断や縫製は、職人の手で生地の裁断を行うフルオーダーと異なり機械で行うため、返品が必要な大きなミスは限りなく少ないと考えられます。着られないようなスーツが出来あがってくることはほとんどないでしょう。


 


「返品できないケース」


「なんとなく思っていたスーツのイメージと違う」「スーツの出来栄えがイマイチ」など、あいまいな理由では返品を受け付けてもらえません。メーカーもプライドをもって看板を掲げているので、オーダーメイドの品を売ることができなくなります。オーダー通りに作られたものなのに、出来上がったスーツが自分に似合わないから返品したい……そんな理由だけでは、もちろん返品はできません。


 


「クーリングオフは適用可能か」


オーダースーツは民法でいう請負契約(作成するメーカーつまり受注者と注文者間の契約)によって作られます。請負契約とは、受注後完成を約束して品物を作り、出来上がったら代金を支払う契約のことです。契約はメーカー、注文者間の約束なので、スーツが完成したら、注文者は代金を支払わなくてはなりません。完成したスーツに不具合(瑕疵)があっても返品はできないのです。
しかし、スーツの出来栄えに問題がある場合、注文者は修理を依頼したり、損害賠償請求をして対抗します。例えば、完成品があまりにも不具合がひどく着用できない、修理できるレベルでないときは、そもそも契約が成立していないと考えられます。着られるスーツを完成させるという契約なので、代金を支払う理由がないのです。クーリングオフとは異なりますが、スーツの返品可否にかかわらず、代金の返還請求は可能だと考えられます。

イメージと違うスーツができてしまった時の対応


オーダースーツが完成しても、メーカーと注文者間でイメージの共有ができていなければ、「イメージと違う」ということが生じてしまいます。もちろんこのようなかなり不明瞭な基準では返品を受け付けてもらえません。ではもし自分のイメージと違うスーツができてきたら、注文者はどうしたらいいのでしょうか。


 


「仕立て直し」


一般的に考えて、一からの仕立て直しは難しいといえるでしょう。しかし、オーダースーツを作れるメーカーによりクレームの対応も異なります。どこまでが部分調整が可能なのか確認しておくことが大切です。万が一、イメージが違うスーツができてしまった場合、どのような理由であれば返品可能なのか、返金はできるのかなど、事前に詳細まで確認し、自分が納得できる条件のメーカーを選んでオーダースーツを依頼するようにしましょう。


 


「返品」


メーカーで「イメージと違うという理由では返品は認めない」ところが多い中、実際には「イメージが違うという理由も含め、オーダースーツの返品を認める」メーカーが一部あります。オーダーを依頼する前には、どんなときに返品が可能なのか、どんなときは難しいのかという点を、しっかり確認しておくことが大事です。

オーダースーツで失敗しないためのポイント

オーダースーツの注文では、自分のイメージをテーラーにちゃんと伝えることが大切です。正しく伝わらないと、注文者とテーラーの頭の中に異なるイメージが出来てしまい、スーツとして形になったとき戸惑うことになりかねません。ここでは伝えるべき内容を学んでおきましょう。


 


「イメージを明確にする」


まずは注文する時点で、自分の作りたいスーツを具体的にイメージしましょう。「正統派」「リッチに見える」「トレンド優先でスタイリッシュに」「信頼を得られる」などのイメージ共有も大切です。あとは、テーラーとしっかりすり合わせをすれば、返品が必要になるような事にはなりません。出来上がったスーツがイメージと多少異なっても、細かい手直しをすることで、理想のイメージに近づけることができます。


 


「生地やボタンのサンプルをしっかり確認する」


生地やボタンは事前に選びますが、パーツで見て良いと思っても、実際にスーツになると、自分が抱いていたイメージと違うと感じることもあります。同じ生地やボタンがない場合は似たデザインのものを使って作られているスーツを実際に試着してみましょう。サンプルだけを見るより、随分と完成イメージがつかめるようになるでしょう。


 


「仮縫い時点でも確認する」


もし、こだわりたい点や細かい希望があるなら、最初だけでなく作業工程のその都度、気になった際など、きちんとイメージが伝わっているか十分に担当者に確認することが重要です。仮縫いの時は必ず試着をし、気になることがあれば、遠慮なく伝えてください。納得がいかないと気づいた時に連絡すれば、出来上がった後、「こんなスーツになるはずじゃなかったのに」とはなりません。

オーダースーツは返品できないのが基本!

残念ですが、基本的にオーダースーツは返品できません。人それぞれの体型や好みを反映して作られているので、返品されても他の人が着られない製品だからです。出来上がったスーツに「どこか違う」と感じてしまうのは、メーカーと注文者の間にイメージの共有ができなかったためです。そのためには、しつこいと思われてもいいほど担当者との詳細な情報共有が大切。受け取り時にがっかりしないためにも、細かく相談に乗ってくれるメーカーを選び、納得できるオーダースーツを作るようにしましょう。