シャツをオーダーしたら、二十二世紀が見えてきた
ファッション評論家:出石 尚三様
2018.11.28
2018.11.28
自分がいちばん気に入っているシャツを着るのは、気分の良いものです。 たとえば、重要会議の朝、お気に入りのシャツが見当たらないと、イライラしたり。
その意味で最高のシャツは、極上の精神安定剤でもあります。自分にとっての「最高シャツ」がいつも何枚か衣裳箪笥で待っていてくれる。これはもう男にとって理想の生活でありましょう。シャツは何枚あってもよろしい。
そんな時に「コナカAIシャツ」の話が私の耳に入ってきた。なんでもIT君がシャツのオーダーを受けるという話なんですね。もちろん私は眉に唾でありました。そもそも私は徹底したITオンチ。IT君なんか絶対信用したくないほうの人間ですから。
でも、モノは試し、の言葉もありますし、一度は騙されてみようかなと。シャツのオーダー。聞いただけで気が滅入る話ですが、簡単。簡単という言葉を口にするより早いかも知れません。
アイフォンひとつあればそれでよろしい。もちろんアイフォンをはじめとするIT機器ということなのですが。自分の姿を撮ってもらって、自分のデータを入れるだけ。身長、体重、性別、生年だけ。あとは、正面、左右のサイドからの写真と後ろ姿だけ。
でも、疑ぐり深い私は、四枚の写真を撮ってもらってなお、まったく信じる気持にはなっていませんでした。 待つこと、一秒、二秒、三秒…………………。やがて採寸結果が出ました。
私のネック・サイズは、40㎝。実はこれ、私が秘密にしていた部分。これまで、自称38㎝だったのですから。IT君は私の秘密まで天下にさらしてしまったのであります。 袖丈、82㎝。ただし、これは左袖。右袖に関しては、83㎝。これもほんとうは内緒にしておきたかったなあ。右腕が、少し長いことを。
少なくともIT君は、シャーロック・ホームズより優れているのではないか。この道数十年のベテランシャツ職人の細かさを、あっさり抜いてしまった印象さえあります。 IT君、「ユウ・ウイン!」君の勝ちだ。私は負けたよ。でも、負けたおかげで、やがてくる二十二世紀の一端をのぞかせてはもらったがね。
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