佐藤 可士和氏インタビュー : すべてのユーザーが自分好みのスーツをパーソナライズできる感覚を楽しんでほしい
2018.08.15
2018.08.15
DIFFERENCEには大きな特徴が2つあります。1つ目は、「すべてのユーザーがスーツをアプリでパーソナライズできる」ということです。パーソナライズとはユーザーが最適なサイズデータを所有し、実現したいスタイルや好みに応じて、ユーザー自身で自由にサイズや生地、ディテールをカスタムできることです。
2つ目の特徴は、「マイデータ」をアプリ上で所有できるということ。サイズや選んだ生地、デザイン、ディテールなど、過去のオーダーデータがアプリ上に残ります。つまり「マイデータ」をアプリ上ですべて管理できるということです。
DIFFERENCEの特徴をこの様に話すと、特異なブランドの様に感じるユーザーもいるかもしれません。しかし実はそうではありません。
私達は日々、自分自身にまつわるデータを記録しています。例えばウォーキングやジョギングなどで、時間や距離を記録したり、ダイエットをしている人なら体重を記録したりしているのではないでしょうか。中には、自分の食べたものや訪れた場所の写真を撮ってSNSに記録している人もいると思います。この様に私達は日々何かしらの手段で「マイデータ」を持ち歩いています。私は、そのマイデータを所有するという感覚を、スーツにも取り入れられたら圧倒的に便利になると考えていました。
この様な背景から、オーダースーツのブランド化については、DIFFERENCE立ち上げの10年以上前から湖中社長と話していました。時代とともにスーツを取り巻く環境が変化し、オーダースーツ事業が実現できる市場規模になりました。加えて、スマートフォンの台頭、コナカのものづくりの体制といった背景が整ったことから、DIFFERENCEを立ち上げるに至りました。
オーダースーツというと、職人気質のテイラーがいる高級店の様な敷居が高いイメージが先行している方もいるかもしれません。私はDIFFERENCEを立ち上げるにあたってまず、この様なオーダースーツに対する「意識の障害」を払拭したいと思いました。
そこでDIFFERENCEでは、デジタル活用で気軽にスーツをオーダーできる「仕組み」を作り、パーソナライズできる「体験」を提供することにしました。1回目は店舗でオーダーをして、2回目からはサイズやオーダー内容といったマイデータをもとにユーザー自身がアプリでオーダーができる。スマートフォンを活用することで、オーダースーツに対する敷居を下げました。
敷居を下げるからと言って、クオリティや価格のバランスを下げるという意味ではありません。クオリティの高さの中に目に見えない価値である「気軽さ」や「便利さ」を積み上げるという意味です。例えば、アプリが使いやすい、価格と納期がわかりやすいから、選びやすく買いやすいといった気軽さです。
アプリでオーダーできるということで、ユーザーは購入する場所や時間から開放されるという「便利さ」も付随します。その様な「気軽さ」と「便利さ」が、DIFFERENCEのオーダースーツの敷居を下げつつも、価値を高めてくれるのです。
デジタルリテラシーは平均値で見ていけば、若年層が高いでしょう。しかし50~60代でもスマートフォンを使いこなし、ファッションに感度の高い方もいます。一方で、若年層でデジタルリテラシーが高くても、ファッションへの感度が低い方もいます。ですから、年齢や性別といった表面上のセグメントは、もはや不要ではないでしょうか。スマートフォンが使えて、自分でスーツを選んで作りたいという嗜好性があれば、年齢も性別も関係なく、DIFFERENCEのターゲットになりえます。
その様なユーザーにDIFFERENCEのオーダースーツという体験を楽しんで頂き、そして便利に使って頂ければと思っています。
DIFFERENCEの様なブランドは今後更に増えていくでしょう。だからこそ、DIFFERENCEが最もカンファタブルな体験を提供できるブランドにしたいと思っています。
ブランドは体験だからこそ、コントロールが難しい部分があります。例えば、過剰なプロモーションはユーザーにとって嫌悪の対象になりえます。一方で、プロモーションを全く受けないと、ユーザーはブランドに物足りなさを感じるでしょう。プロモーションの頻度でさえも、全部ブランドの体験になってしまうのです。しかしプロモーションをどれくらいの頻度で届けたら、ユーザーは「ちょうど良い」と感じるのか、デジタルを使うことで、全部トラッキングできます。
他にも、デジタルの活用方法は無数にあります。例にすぎませんがアプリを介して、ユーザー同士やテイラー、もしくは人工知能とコミュニケーションが取れたりすれば、ブランドに更に居心地の良さを感じてもらえたりするかもしれません。デジタル活用をしたブランドの最前線として、さらなる可能性を常に創造し、ユーザーに提供していきたいと思っています。
DIFFERENCEでスーツを作る過程を楽しんで欲しい。私はそう思ってディレクションをしています。