気になるクールビズ事情~時期や服装・マナーについて~
目次
日本の夏のファッションは、2005年を境に大きく変わりました。
小泉純一郎内閣で環境省のトップを務めた、小池百合子大臣による「クールビズ」発表と提唱会見です。
「環境のために冷房温度を緩めて、それに合った清涼軽量なファッションをオフィスでしましょう」という提言です。
ネクタイさえ外せば良いというスタートでしたが、その後「だらしなく見えない」商品も数多く販売されて、今はすっかり定着しました。
クールビズの認知度は98.3%(日本気象協会2017年発表)に達します。
ただ、同時に発表された実施率は61.5%に留まっています。
エリアによる気温差や企業文化もありますが、聞いてはいるけど具体的にどうすれば良いのか解らないという方も多く含まれる事が推察されます。
今回は、クールビズにおける注意点やマナー等のポイント、環境省が提唱する詳細を含めて解説します。
クールビズとは?
クールビズは英語表記でCOOL BIZで、造語です。
COOLはカッコイイに涼しいを加えた意味を持たせて、BIZはbusinessの略語です。仕事の意味ですね。
当時の小泉首相や小池百合子大臣の発案だと誤解がありますが、クールビズは、環境省が一般に公募した中から選ばれています。 当初のスローガンは、「みんなで止めよう温暖化」-チーム・マイナス6%でした。
クールビズは、夏の決められた期間に28℃の冷房温度設定でも、快適に効率よく仕事が進められる、「柔軟な軽装」のライフスタイルを奨励したものです。 具体的にノーネクタイ・ノージャケットを提唱しているわけではありません。
クールビズは服装だけで無く、ライフスタイル全般に提言しています。
快適に働くスタイル
- ・うちわや扇子の利用
- ・ブラインドや断熱シートの奨励
- ・アップの髪型の奨励
- ・清涼感のある色使い・薄手の素材感な軽装の奨励
- ・冷感グッズの利用
- ・勤務時間の朝型シフト
- ・扇風機の活用
など、多岐に渡ります。
快適にすごす家庭スタイル
- ・一つの部屋に集まり、エアコン稼働を一台に
- ・エアコンフィルターのこまめな掃除
- ・グリーンカーテンの奨励
- ・エアコン使用時にドアや窓をしっかり閉める
- ・扇風機の効果的な活用
- ・風鈴や金魚などを生活に取り入れる
- ・外出前にカーテンを閉めておく
など、こちらも多岐に渡っています。
当初は省エネルックと呼ばれた、羽田孜首相の半袖スーツが頭をよぎったベテランビジネスマンも多く、「どうせ定着しない」や「だらしない」「ふさわしくない」との声も多くあがりました。
しかし、トヨタ自動車など大企業の多くが自社だけで無く取引先にも軽装を求めたり、官公庁・銀行などでも広く奨励されたりして、一気にクールビズは浸透しました。
クールビズの期間には決まりがある
環境省はクールビズの実施期間を毎年発表して、取り組みを呼びかけてきました。
2020年3月31日に環境省は、クールビズ期間設定の廃止を発表しています。 クールビズを止めるということではありません。小泉進次郎環境大臣は記者会見で「ネクタイを締めるかどうかは一人一人がきめていくことが大事」として、各自で気温に応じた服装を呼びかけています。
環境省が設定する定義
環境省は、クールビズについて
脱炭素社会づくりに貢献する製品への買替え、サービスの利用、ライフスタイルの選択など地球温暖化対策に資するあらゆる「賢い選択」を促す国民運動「COOL CHOICE」を推進しています。 この「COOL CHOICE」の主要施策のひとつとして、室温の適正化とその温度に適した軽装などの取組を促す「クールビズ」を、今年度も推進していきます。
クールビズの実施に当たり、日本百貨店協会、日本チェーンストア協会、一般社団法人 日本フランチャイズチェーン協会も連携して取組を実施することとしており、各会員企業の店舗において、冷房温度緩和の取組を行うなど、クールビズの取組を推進していきます。
と表記しています。
「COOL CHOICE」-地球温暖化対策のための国民運動 の中にある重要な項目として、クールビズを位置づけています。
クールビズ以外の「COOL CHOICE」は
- ・ウォームビズ-暖房温度を低くしても快適に乗り切る
- ・エコドライブ-低燃費の自動車で安全を考慮した運転
等があります。
2020年の設定期間は?
2020年のクールビズ実施期間は、例年通り5月1日~9月30日でした。 出典:環境省報道発表資料
前述の通り、来年から環境省による期間設定は廃止されます。
クールビズになるためのポイント
2011年に起こった東日本大震災以降に、電力不足を考慮してクールビズを更に進めた「スーパークールビズ」も提唱されています。
環境省の定義から見ていきましょう。
■環境省におけるクールビズの服装の可否
クールビズ | スーパークールビズ | |
---|---|---|
ノーネクタイ | ◯ | ◯ |
ノージャケット | (◯) | ◯ |
半袖シャツ | ◯ | ◯ |
かりゆしシャツ | (◯) | ◯ |
ポロシャツ | × | ◯ |
アロハシャツ | × | ◯ |
Tシャツ | × | △ |
ランニングシャツ | × | × |
チノパン | ◯ | ◯ |
ジーパン | × | △ |
ハーフパンツ | × | × |
スニーカー | × | ◯ |
サンダル | × | △ |
○ …可 (○)…可だが、徹底されていない △ …TPOに応じた節度ある着用に限り可 ×…原則不可 |
期間中は「社内だけでなく、対外的にノーネクタイでも失礼に当たらない」が基本です。 企業によってクールビズの装い基準は異なる事があります。 それを踏まえて、クールビズの服装注意点とポイントです。
サイズに気を付ける
全体的に身につけるアイテム数が減少する為、ひとつひとつが全体を構成する重要なパーツになります。 「ラフ」「だらしなく見える」残念な印象を与える一番大きな理由は、サイズが合っていない事です。
ジャストフィットしたサイズを選ぶのは、重要なポイントです。 オーダーメードを選択肢に入れるのもいいですね。
ノージャケット・ノーネクタイ
男性のクールビズで一般的なのは、ノーネクタイ・ノージャケットです。 いつものスーツでネクタイを外しただけでもクールビズと呼べないこともありませんが、ノーネクタイでも映えるビジネスカジュアル仕様シャツの着用が簡単で効果的です。 襟元が自立する力強さがあってスッキリ収まりの良い「ホリゾンタルカラー」「カッタウェー」「ワイドカラー」「ボタンダウン」タイプのシャツを選んでください。
ここがちゃんとしていれば、あとはシャツのシルエットです。 ピッタリフィットの適切なサイズシャツを着用していれば「だらしない」印象を与えることはありません。 ゆるゆるでなく、身体のラインが解るくらいが格好いいです。
襟元が開くので、インナーが見えないように気を配ってください。 丸首ではなく、Vネックのシャツが良いですね。
クールビズの基本は涼しい服装にあります。 合わせるスラックスも明るめの、特に白系・ベージュ系カラーは涼しげでオススメです。
生地やデザインにこだわる
クールビズは、シャツの露出が大きくなるのでディテールに拘りましょう。 前述のように、襟がポイントになります。
あまりゴテゴテした装飾やデザインは野暮に繋がりますので、基本はスッキリと。 さりげなくボタンホールの色や、ボタンの付け糸の色にこだわるのも粋です。
オーダーシャツでは、ジャストサイズで柄や襟のカタチ含めて、こだわりのクールビズシャツが仕上がります。
基本のクールビズコーデから一歩進めるなら、シャツの柄にもこだわります。 たとえば、ギンガムチェックシャツにベージュのパンツを合わせれば、ビジネスファッションの中にカジュアルを品良く取り込むことが出来ます。
ジャケットは清涼感のある素材感にこだわりたいですね。 涼しげで楽に羽織れる麻素材(リネンもラミーも麻の種類です)は、一枚欲しいクールビズアイテムです。 カラーはアース系の明るめカラーが、クールビズにはフィットします。 企業内のルールが許されるなら、ポロシャツをインナーに使う事もOKです。
男女でことなる服装マナー
クールビズのマナーについて考えてみましょう。
クールビズ期間中だけでなく、ビジネスシーンに必要なのは清潔感です。 汗染みを目立たなくする清涼素材や、洗える仕様になっているアイテムも積極的に活用しましょう。
昨今では、オフィスファッションのカジュアル化が進んでいます。 ただそれでも、「きちんとした大人」である印象を与える事も最低限のマナーと言えます。 職場の人間や対面する相手に不快感を与えないことが基本です。
勤務先や業種によっては、マナーも変わります。 TPOも含めて考慮し、涼しく過ごせる服装がクールビズのマナーです。
男性の場合
だらしない印象を与えない事が重要です。 ノーネクタイで下着が見える事態は、避けてください。
クールビズのビジネスコーデでは、ジャストサイズがキモです。 ノーネクタイで大きめのサイズ感は、間の抜けた印象に繋がります。
シャツの裾が出たり、出かかっていたりする事は絶対に避けたいNG行為です。
清潔感を保つために、こまめに洗う・クリーニング・アイロンの頻度を上げてください。 常に新しいハンカチの携帯も忘れずに。
女性の場合
女性の場合は男性と異なり、環境省で明確な基準を示していません。
基本的には涼しげな服装と考えて良いのですが ノースリーブやキャミソールなどの露出はマナー違反です。
極端なミニスカートやサンダルも同様です。 会った人が視線に困る様な、開きすぎた胸元にもご注意ください。 インナーの透けにも気を配りましょう。
行先の雰囲気や相手を考える
気合いを入れたプレゼンなどの場面や、大切な商談に臨む場合はクールビズ期間中であってもジャケット・ネクタイは着用した方が良いです。 その場合、暑苦しく見える着こなしではなく、清涼感を印象として与えるコーディネートを心がけます。メリハリの効いた配色が、出来る男を演出します。
ジャケットを持ち歩く
中堅以上の方や、管理職の方は対外的な立場も考えて、クールビズの中にジャケットを取り込む方がベターです。 社内での打ち合わせならともかく、対外的に商談する時にはジャケットの着用をオススメします。
外を歩く場合はジャケットを脱ぐことも多いですから、シワになりにくい素材を選ぶと良いでしょう。シアサッカー素材やニット素材・ポリエステル系の機能素材が重宝します。
まとめ
高温多湿な日本で、快適に過ごすための新しいマナーがクールビズです。
ジャストサイズと、砕けすぎずには注意してください。
清潔感を保てば、決して難しいものではありません。
社会人として常識を考えながら、ご自身の置かれたビジネスシーンでのマナーとルールを守って、「涼しく」「かっこ良く」を楽しみながら、地球環境にも配慮するクールビズ。 積極的に楽しみながら暑さを乗り切りましょう。