サスペンダー(ブレイシーズ)でワンランク上のスーツスタイルに
目次
トレンドは、クラシック回帰の流れの中で、サスペンダーは注目のアイテムです。
スラックス着用時にはベルトを着用する方が圧倒的に多いですし、サスペンダーは動きにくいと誤解している方も多い様です。
しかし、決してそんな事はありません。 その証左として、激しい動きが要求される社交ダンスでは、サスペンダーは必要不可欠なアイテムです。
クラシカルなムードだけではなく機能的であり、スーツスタイルの美しい着こなしを可能にするアイテム、大人のお洒落「サスペンダー」を解説します。
サスペンダー(ブレイシーズ)でワンランク上のスーツスタイルに
3ピーススーツで、ベストがベルトのバックルと干渉して、不快な思いを経験したことありませんか?シワになったり、場合によっては引っかけたりと、スタイルも台無しです。 サスペンダーを使えば、そんなストレスとは無縁になります。
もちろん、それだけではありません。
最近のスーツトレンドで、スラックスは股上の深めの傾向にあります。
股上が深くなると、リンクしてシルエットは太めになっていきます。 そんなクラッシックな傾向にあるスーツを、綺麗に見せるアイテムがサスペンダーです。 ベルトを使用するよりも、多くのメリットが有ります。
サスペンダー(ブレイシーズ)とは
「サスペンダーの歴史」
サスペンダーの発祥は18世紀フランスと言われています。
当時のスラックスの股上は深く、胸の近くまで高さがありました。スラックスを肩から紐で吊す事が一般的だったのです。当時ベルトは普及していませんでした。
現在ほどサイズバリエーションが豊富ではなく、大は小を兼ねる時代であったと言えるでしょう。ウエストサイズも渡り巾(太もも)サイズも、大きい事が当たり前でした。
イギリスに渡ったサスペンダーは、フォーマル礼装で重要なポジションを確立して、フォーマルを着る時にのみ使用される様になります。たとえばタキシードの着用時に、「ベルトやボタンを見せるのは、下着を見せるのと同じだ」という考え方から、スラックスには必ずサスペンダーが使用される前提になっています。現在でも本格的なタキシードのスラックスにベルトループが無い事が多くなっています。
洋装の歴史から考えれば、サスペンダーは見せないことが基本です。
正統なスーツであるスリーピーススーツで着用する場合に、サスペンダーはシャツとベストの間に装着します。2ピーススーツの上下やジレを用いないコーディネートの場合、上着のボタンを閉じていない時にも、サスペンダーが簡単に見えない位置に装着することが正しい着用方法になります。
1900年代になると、労働者の作業用スラックスには、サスペンダー用のボタンとベルト通しの両方が装着される様になっています。
1930年代頃になると、多くの人はベルトの使用が多くなり、スラックスもベルト通しのみがついたものに変わっていきます。
1940年代頃になると、サスペンダーの使用はフォーマルに限られる様になります。
1960年代にはサスペンダーにクリップ式が登場して、ベルト通しのみのスラックスにも使える様になりました。これ以降サスペンダーは復興して、今に繋がります。
イギリスではサスペンダーの事をブレイシーズ(braces)と呼んでいます。 日本で一般的になっているサスペンダー(Suspenders)は、アメリカ英語です。
イギリスでサスペンダーは、ガーターベルトの意味になり、アメリカでブレイシーズは歯科矯正具の意味になります。
サスペンダーの種類
サスペンダーは、大きく分けても数種類あります。
形の違い
以下の固定点数はクリップ型の場合です。
Y型
Y型のサスペンダーは、前が2点後ろ1点(計3点)で固定するタイプです。
2本のバンドが背中中央で固定されていて、Yの形状になっています。
後ろ1点を中央で固定するため、ベルト通しの上にクリップで挟む必要があります。
その為、背中側に2つクリップがあってベルト通しを避ける形のタイプもあります。ボタンタイプなら、問題ありませんね。 フォーマルな装いに限らず様々なシーンで使われるので、一番多く見るタイプですね。 19世紀中頃からは、Y型が主流になっています。
X型
X型のサスペンダーは、前後それぞれ2点(計4点)で固定するタイプです。 後ろ側でパーツを介して交差していて、Xの形状になっています。
しっかりと4点で固定する事が出来るので、スラックスの形が崩れにくいのが特徴です。 背中で交差していることから、肩紐がずれて落ちにくいメリットもあります。
フォーマルだけでなく、カジュアルやアウトとドア、ワークウェアにも使われます。 18世紀から19世紀初頭まではH型と並んで主流でした。
H型
H型のサスペンダーは、前後それぞれ2点(計4点)で固定するタイプです。
X型に似ていますが、背中で交差することなくパーツで繋いでいることで、それぞれのベルトが身体の動きに合わせて可動することが、快適な使用感やフィット感に繋がります。 X型と同様に、フォーマルだけでなく、カジュアルやアウトとドア、ワークウェアにも使われます。
18世紀から19世紀初頭まではX型と並んで主流でした。
ショルダーホルスター型
ショルダーホルスター型は前後では無く、左右の2点で固定するタイプです。 ベルトは背中部分で交差していて、リュックを背負うように大きな「輪っか」に左右の腕をそれぞれ通すイメージです。
前述のタイプと比較して、スラックスの重みが肩に集中せず、バンド全体に分散するメリットが有ります。2点だけの接続なので脱着が容易である事もメリットです。 アウトドアの作業やベルトが出来ない妊婦さん、肩からずれ落ちる事が少なく、なで肩タイプの方にも最適です。
20世紀になってからの新しいタイプです。
装着するタイプ
サスペンダーを使うには、スラックスと接続して固定する必要がありますよね。
大きく2種類、以下のタイプがあります。
サスペンドタイプ
スラックスに装着するのに、金属製クリップで挟むタイプです。
ボタンタイプ
スラックスに装着するのに、ボタンをかけるタイプです。
使い勝手が良いのは、どんなスラックスにも着用できる「サスペンドタイプ」です。
ただ、スーツ着用でサスペンダーを装着するなら、「ボタンタイプ」の方がお洒落に決まります。歴史があることもありますが、スラックスに装着した時に、目立つ金属パーツが無いので、スーツのエレガントな印象を邪魔しません。
また、ボタンタイプは、スラックスの素材を痛めないメリットもあります。
ボタン型の場合1箇所に付き複数で固定するため、接続点数(ボタンの数)はクリップ型の倍になります。
スラックスに、最初からサスペンダー用のボタンが装着されている事は希です。 「ボタンタイプ」のサスペンダーを購入すると、装着するためのボタンが付くことが大半です。オーダースーツを作るなら、当初から付けるのも良いですね。
カジュアルには「サスペンドタイプ」で、スラックスを選ばず使い倒しましょう。
ボタンの位置
ボタンタイプサスペンダーのボタンは3つのタイプがあります。
- ・前後共に内側
- ・前後共に外側
- ・前は内側で後ろは外側
ボタンの位置は、前後共に内側にあるのが正統なタイプです。
前だけ伝統的にして、後ろは腰掛けた時に違和感を薄める外側にするのは、合理的ですね。
サスペンダーの素材
張りがあって使いやすく、見た目も美しいグログランと呼ばれる平織りが主流です。 元々はシルクを使っていて、手触りも良い事が特徴の一つでしたが、現在は強度や保守の面から化学繊維との混紡が主流であり、技術の発達で手触りも遜色なくなりました。
サスペンダーに革命をもたらした素材が、1930年代後半に誕生したエラスティックです。 伸縮性があり、サスペンダー装着時の快適性が大幅に上がりました。 反面エラスティックの登場は、仲間であるソックスサスペンダー・ガーターを過去の遺物にしました。ソックスやストッキングがエラスティックを使用する事で、ズリ落ちなくなったからです。
伸縮する素材を全体に使うタイプと、背中の一部のみ伸縮するタイプがあります。
革製のベルトを使ったタイプもありますが、伸縮性は全くありません。 しかし大人っぽい印象で、格好良いのは間違いありません。
サスペンダーのメリット
サスペンダーを使う事は、多くの実用的なメリットがあります。
綺麗なシルエットを出せる
スラックスのシルエットが、本来の思惑通りに最も美しく見えるのは、余計な力が掛からない状態で、立体的に「ストン」と落とした状態です。 特に、太めのシルエットタイプのスラックスで顕著に効果が出ます。
サスペンダーを使う事で、スラックスのセンターがしっかりと定まり、タックが入ったタイプでは、本来の美しい状態のシルエットを保持しやすいメリットが有ります。 ベルトを締めることで発生する可能性がある、意図しない余分なシワが寄ることを避けられます。
シルエットが美しければ、体型のウィークポイントの露出を隠し、足長効果も期待出来ます。
前述の様に、3ピースベストのバックル干渉も防いで、本来のシルエットが出せるメリットも有りますね。
裾の長さの見せ方が調整可能になる
サスペンダーの長さを微妙に調整することで、裾の長さを変えられるも大きなメリットです。ウエストラインの位置を意図的に変えて、安定的にかつ一定に保つ事が出来るわけです。
靴のタイプや状況により、微調整が効くのはお洒落コーデにとても有効です。 ちょっと食べ過ぎた・・・場合にも腰の位置を変更できて楽になりますね。
お腹周りを締めつけない
ジャストサイズの適正なサイズを着用すれば、スラックスはベルト無しで着用しても落ちません。大きめサイズのウエストか?小さめサイズのウエストか?二者選択を求められた場合に、ストレスが溜まらないのは大きめのサイズですよね。ベルトを使う場合、スラックスがずれ落ちない為には一定のテンションで締め付ける必要があります。
サスペンダーはある程度のウエストサイズの余裕を、許容するメリットもあります。 もちろん許容できる余裕には限度があります。将来のお腹周りの成長を見越して、「ある程度」大きなウエストサイズを購入しても、美しく着用できるメリットがあります。
ベルトをするのが窮屈と感じる方に、サスペンダーは特にオススメです。 ベルト無しのスーツ着用は、ちょっと残念な大人の印象を与えてしまいますが、サスペンダーを使う事で、エクスキューズが成立します。
ビジネスシーンでのサスペンダーの選び方
以下、実際にサスペンダーを選ぶ時のポイントです。
巾
ビジネスシーンで着用するサスペンダーの最適な巾は、3cm~4cm程度が最適です。
あまり太い巾では主張が強くなりすぎてカジュアル感が増し、あまり細いタイプは少々貧相な感が出ます。
素材
ビジネスシーンで着用するサスペンダーの最適な素材は、収縮性のあるタイプです。
動きが大きい動作が多い方は、全体が収縮性するタイプが良いですが、安定感のあるのは一部のみに収縮性があるタイプです。
型
ビジネスシーンで着用するサスペンダーの最適な型は、Y型です。
後ろがスッキリとしたシルエットになります。
肩から落ちやすいと感じる方は、X型が良いです。
色柄
ビジネスシーンで着用するサスペンダーの最適な色柄は、シンプルなタイプです。
フォーマルでは基本的に白か黒になります。ビジネスシーンでも白・黒は勿論OKですが、もう少し柔軟になります。具体的には茶系や紺系の落ち着いた色柄がオススメです。
シャツやネクタイ、靴とのコーディネートで共通色を持たせるのも楽しいです。
節度のある選択をして、カジュアル感が出ない様に気をつけてください。
サスペンダーのコーディネート
サスペンダーのコーディネートは、チラ見せ部分まで気を抜かない「粋」がポイントです。
アズーロエマローネ
イタリアで人気のネイビーとブラウン系の組み合わせを積極的に使います。 たとえば、ネイビースーツにブラウン系のネクタイ・革靴を合わせるスーツスタイルは定番ですが、そこにブラウン系のサスペンダーを加える事で、お洒落感は大幅アップします。
グレースーツ
グレースーツにブルー系のシャツ、グレー系のネクタイでシンプルなコーディネート。
シャツはシャンブレーのホリゾンタルカラーだと、爽やかな大人のビジネスコーデになります。ひと味加える大人の余裕を見せつけて、ブラウン系の革靴にブラウン系のサスペンダーを利用するのは如何でしょうか?
ネイビーストライプスーツ
ネイビーストライプスーツは、出来るビジネスマンに人気のスーツ柄。白のシャツに赤のネクタイは鉄板コーデです。プラスして白のサスペンダーを使うと、クラッシックなムードに相性抜群のコーディネートになります。
ブラックプリーツパンツスーツ
ベルトループの無いプリーツパンツは、トレンド最前線ですね。
フォーマルムードたっぷりにサスペンダーにも拘りたいところです。
ネクタイはブラック系で、シャツは薄手の臙脂ストライプでコントラストを出して、サスペンダーには、黒ベースに臙脂系の入った小柄でコーディネートは如何でしょうか?
大人の遊び心を加えた正統なクラシックスタイルを演出出来ます。
サスペンダーでよくあるQ&A
よくある質問をまとめてみました。
サスペンダーとベルト、両方同時使用はできますか?
できません。
ベルトを使用する場合は、サスペンダーを外してくださいね。
サスペンダーを使うのに、適したスラックスはありますか?
細身シルエットのスラックスは避けて、太めのシルエットを選んでください。
股上が浅いタイプは避けて、深いタイプが良いです。
ジャケットを脱ぐ場面では、サスペンダーは止めた方が良いですか?
サスペンダーは本来チラ見せが原則で、堂々と見せるものでは無い!というのが正統な考え方です。
しかし、それほど神経質になる必要は無いと考えます。 肩肘張らずに好きなものを楽しむ方が良いと思いますし、気になる様なら3ピースでベストの着用するといいでしょう。
まとめ
サスペンダーを利用すると、スラックスを腰では無く肩で履く事が出来ます。 細身で股上が浅いタイプにサスペンダーの使用は向きません。
股上が深く、ゆったりとしたクラシカルなシルエットを持つスラックスでは、本来の美しさを引き出す為には、サスペンダーを利用して初めて可能になるといっても過言ではありません。
まだまだ市場では少ないシルエットなので、トレンドを先取りしたクラッシックなデザイン、オーダースーツでジャストサイズを実現して、サスペンダーを使ってみませんか?