厳選された素材から作られる「レダ」はコストパフォーマンスの高いイタリア生地
「REDA」はレダと読みます。
「レダ」のブランドネームを付けた洋服は、量販店・専門店・百貨店に数多く並んでいます。
有名アパレルブランドにも広く使われていて、「タケオキクチ」や「ビームス」などの店頭で、「レダ」素材を使った既製品スーツやジャケットをよく見かけます。
もちろん、日本だけに限らず、「アルマーニ」「ラルフローレン」などの、世界中のファッションブランドの店頭既製品にも、数多く「レダ」のラベルタグが付いています。
数多くのテーラーにも商品は供給されていて、幅広いニーズに応えています。
「レダ」は1865年に創業した、イタリアを代表する生地メーカーの一つです。
質の高いメリノウールを使った織物に定評があります。
その品質を支えているのが、原毛調達に関するこだわりです。
オーストラリア現地に自社資本の原毛買い付け会社を設立していて、ニュージーランドには自社牧場を運営しています。30,000ヘクタールの牧草地に、30,000頭の羊を飼育しています。
自社で厳選された原料は、ミラノ北部にあるビエラ地区の自社工場に運ばれ、更に選別された原料のみを紡績してウール糸になり、織り・染色・最終仕上げまで全ての工程を社内一元管理する事で、高い品質のウール素材を大量生産しています。
また、SDGsが提唱される以前から、サスティナビリティへの取り組みに積極的で、1990年代から工場のオートメーション化を進めています。ソーラーパネルの導入・大規模な排水濾過施設の整備などを進めてきました。
EUが定める、EMASというエコマネージメントシステムによる認定を受けていて、環境への配慮が公的に認められています。
ブランドの歴史
「レダ」の歴史は、北イタリアビエラ地区ピエモンテの起業家カルロ・レダによって、1865年に設立された羊毛工場に始まります。
1919年以降は、ポットポアラ家が経営実権をリードしていきます。
イタリアは日本同様に地震国で、ヨーロッパ有数の災害多発国という側面があります。
「レダ」のあるビエラ地区は、豊富な水が有りウールの生産に適していますが、その豊かな水によって何度も洪水災害に襲われています。
しかし、大きな被害を受けても常に前を向き、それを契機に工場生産設備の最新鋭化をしています。
現在は治水対策が進み、被害は少なくなってきていますが、常に効率の良い生産設備と最新のテクノロジーを取り込むことは、この経験から得たものとされていて、進化し続ける企業姿勢は今も変わっていません。
持続可能な革新へと更に進化している「レダ」は、150年以上に渡り高品質のメリノウールを生産してきた歴史を大切にしながら、新しい未来に向けたアプローチが世界で高く評価されています。
織物の基本知識
「レダ」の品質の高さを理解するために、役に立つ織物の基本的な知識を見ていきましょう。
素材としてのテキスタイル善し悪しは、多くの複合的な要素で構成されています。
基本として、「どれくらいの太さの糸」を、「どれくらいの密度」で、「どんな組織(織り方)」をするか?をおさえる事です。
糸の太さ
太い糸を使えれば、ザックリとしたテキスタイルに仕上がり、細い糸を使用すれば繊細な仕上がりになります。
スーツ地としては、主に2/48から2/80程度の糸番手が使われます。数字が大きくなるほど細い糸を表します。2/80のことを80双糸(そうし)と読みます。
羊毛は2本の糸を撚(よ)って(ねじり上げるイメージです)、織物に用いられます。
双糸にする事により、安定した均一な太さになるため、一般的なウール素材に使われています。
1本の糸を撚って使う、単糸使いの織物もあります。1/30と表記して30単糸と読みます。
1/30と2/60は同じ太さになります。双糸と比較して均一感が劣る事を逆手に取り、織物に表情を加える事に多く用いられます。
羊毛の原料グレード(繊細さ)によって、糸の太さに用いる事の出来る限度があります。
細番手の糸を製造するのには、原料の繊細さが必要になります。
当然原料が繊細ならば、コストは高くなります。
本来織物は芸術では無く営利目的で製造されるので、よりコストの安い羊毛原料を使用して、如何に細い糸を作成するかに力を集中します。
しかし上質な素材は、これらのセオリーを無視して製造されています。
本来であれば2/80番手の製造が可能な上質原料を用いて、2/48や2/60番手を製造にすることにより、「滑らかさ」「上質な手触り」を表現しています。
同じウールの生地でも、中国産を中心とした普及品とブランド生地の差は、このような違いがあります。
よく誤解されるのは、「super100’」や「super120’」を糸の細さと解説されている事です。
これらは原料の繊細さを表していて、糸の太さではありません。中身は多くの差が存在していて、同じ「super100’」と表示されていても、個別に比較すれば大きな優劣が存在します。
数値的には同じ繊細さを持つ原料でも、羊毛本来の持つ「クリンプ」と呼ばれる縮れが、織物の仕上がり品質に大きな影響を与えます。
上質なクリンプを持つ原料は、弾力性に富み、優れた張りコシとシワからの回復力に繋がります。
上質なウールは、着用した後で適正にハンガーに掛けておけば、シワが自然に回復するのは「クリンプ」が大きな役割を果たしています。
密度
「打ち込み本数」と呼ばれています。
決められた範囲に、縦横どれくらいの糸が入っているのか?ということが、生地の仕上がりには、大きく影響します。
「打ち込み本数」は、少なければソフトになる反面、特にメンズでは必要な張りコシが無くなり、物性的な問題(縫い目から裂ける等)が出ます。
逆に「打ち込み本数」が多ければ、張りコシが出て物性的な問題も解決出来ますが、全体的には固くなってしまいます。
上質なブランド素材は、「打ち込み本数」が多くなっても、使う糸の上質さで固くなる事が無く、「張りコシ」がありながら、「しなやかさ」を出す事を両立させています。
「打ち込み本数」は、コストに直接反映されます。
「打ち込み本数」が多くなれば、同じメーター数を織り上げるのに時間が掛かるためです。
コストを考えれば、打ち込むスピードが速ければ速いほど、生産効率は上がります。
しかし、早いスピードで糸を飛ばせばテンションが掛かり、羊毛の持つ素晴らしい特性のクリンプが持つ効果は減少してしまいます。
上質なブランド素材は、生産効率が落ちてコストが上昇しても、クリンプ特性に最適なテンションに収まるスピードを選択することで、高い品質を生み出します。
織り組織
大きく分けて、「平織り」「綾織り」「繻子(しゅす)織り」があります。
平織りは、主に春夏に使われる清涼感が出る軽量な織物で、最も基本的な織り方であり、使っている糸の品質がダイレクトに出ます。トロピカルウールと呼ばれます。
同じトロピカルウールでも、上質なブランド素材は、原料の良さと適正な「打ち込み本数」によって、中国を中心とした普及品とは確実に大きな差が出ます。
伝統的な春夏素材として、上質なブランド素材は「綾織り」を用いる事があります。
「綾織り」ではトロピカルウールと比較して、織物に重量が付くため、細番手の糸が使われます。清涼感を持たせるため、撚糸回数を増加させた強撚糸を使う事もあります。
どちらの手段も、コストが掛かる手法です。
「綾織り」「繻子織り」は比較的重量を付けやすいため、主に秋冬素材として使われます。
コストを考えれば、太番手糸をシンプルな綾織りで仕上げる事で、秋冬の利用に使える生地には仕上がります。
上質なブランド素材は、敢えて品質の高い細番手糸を用いて、織り組織に変化を持たせることによって、秋冬の利用に使える重量感の構築をします。上質な原料糸をたっぷり使うので、必然的にコストは高くなります。
レダ素材の特徴
「レダ」がリリースする高品質なメリノウール素材は、上質な質感を備えていて、イタリア素材らしい色艶を放ち、ソフトでしなやかな風合いを持っています。
多くの生地メーカーの中から、ブランドアパレルが「レダ」を選ぶのは、その品質高さからは考えられない、リーズナブルな価格です。
最新鋭の効率の良い生産設備を持ち、大量生産することにより、コストパフォーマンスの高いウール素材を提供しています。
長い歴史に裏打ちされたクラシカルなタイプから、トレンドを提案する尖ったタイプやファンシーなタイプの他、最新の機能素材の提案も豊富で、毎シーズン数千種類の生地デザインがリリースされています。
シルクの様な光沢を、特殊な加工で表現する「ドルフィン加工」や、夏の太陽光から赤外線と紫外線だけを反射して、表面温度を下げる清涼感が評判の「アイスセンス」など、実用的な機能をビジネススーツに盛り込みながら、格好いいスーツ地に仕上げるのは、「レダ」が最も得意とするところです。
「レダ」のメリノウール生地は、ビジネススーツに最適です。
具体的に素材を見ていきましょう。
秋冬のレダ素材
ATTO
「ATTO」はイタリア語で、日本語に直訳すれば「活動」という意味です。
17.0ミクロンのSUPER130’sという最高級原料を贅沢に使用して、糸の作成時に大幅に撚糸回数を増やす「超強撚糸」で織られています。
撚糸とは、糸に撚りを掛ける事ですが、イメージとして糸の両端を持って、左右で逆に捻りを加える事を想像して下さい。
単糸の状態の撚りは、Z撚りと呼ばれる方向に捻りが加わっています。
より安定した強度を持たせるために、通常は2本の糸を撚り合わせて双糸にしますが、この時の撚り方向は、Z撚り方向とは逆のS撚り方向で撚糸されます。
反対方向に2本の糸が撚られる事で、単糸はふっくらとしたウールの良さを出しながら、捻られることで強度を確保しています。
強撚糸と呼ばれる糸は、通常とは逆のZ撚り方向に撚られています。
元々撚りが掛かっている方向に撚ることで、糸はどんどん固くなっていきます。
この撚り回数を大きく増やした糸が、超強撚糸です。
「ATTO」には、春夏物も有ります。
Super130'sの最高級原料を用いた超強撚糸によって、通常のスーツ地とは違う立体感が出ています。
シワになりにくく、ストレッチ性があり、機能とファッションが両立しています。
Silky Effect(シルキーエフェクト)
従来のウールが持つ光沢感を超えた、シルクの様な色艶を持つ特殊加工が施されています。
加工方法の詳細は社外秘で公開されていませんが、ウール織物では以前から、最終仕上げ工程で、回転する加熱ローラーに織物を圧着させて、蝋(ろう)を使用したチンツ加工と呼ばれる光沢を付ける手法が有りましたが、蝋では無く特殊な溶剤を使用していると推察されます。
「シルキーエフェクト」加工をする機械は、社内でドルフィンと呼ばれているため、ドルフィン加工・ドルフィンフィニッシュと呼ばれています。
この加工をしたウール織物が、イルカの濡れた肌艶と滑らかさを彷彿とさせる事から、付いた名前だと言われています。
同じ「シルキーエフェクト」加工が施されても、色目によって大きく表情が変化する面白さが有ります。
加工だけが注目ポイントでは無く、本来の生地原料にはSUPER110’sを使った霜降り糸が使われていて、滑らかな手触りと光沢感を持っています。
落ち着いたクラシックな表情に、シルキーな光沢感が加わった魅力は他に類を見ない仕上がりです。
Super130'S
17.0ミクロンのSUPER130’s原料を使用した、ワンランク上のお洒落が楽しめます。
秋冬物では、見た目のウォーム感からは想像も付かない軽量に仕上がっていて、原料の素性の良さを肌で感じることが出来ます。
優れた光沢感と、美しい表情ある表面感は、誰が見ても一目で解る「イイ物感」があります。
ジャストサイズのオーダースーツで仕立てれば、一目置かれるのは間違いありません。
春夏のレダ素材
ATTO
超強撚糸を使用している事で、通常のウール素材と比較して「通気性」「防シワ性」「ストレッチ性」が大きく向上しています。
風合いは清涼感があり、夏を快適に過ごすスーツ地として最適です。
for SU MISURA(フォー スミズーラ)
「SU MISURA」はイタリア語を直訳すれば、カスタムメイドの意味になります。
ここでは、サイズをカスタムメイドするための、「オーダースーツ用」を表しています。
定番的なスーツ素材コレクションで、幅広い客層に対応する豊富な柄が揃っています。
染め糸を使用したソリッドなスーツ柄で、本質的なウールの良さをリーズナブルに満喫できます。
無地柄からトレンドのチェック柄まで、自在に料理できる「レダ」のビジネススーツ素材の中心ポジションにあるのが、「for SU MISURA」です。
イタリア生地特有のしなやかな肌触りと、豊かなドレープ性が楽しめます。
ICESENSE(アイスセンス)
夏のビジネススーツが暑い理由として、カラートーンが大きく関係してきます。
子供の頃、虫眼鏡を使って太陽光を一箇所に集めて、燃やす実験を思い出してみて下さい。
白い紙では焦げるだけだったのに、黒い紙を使うとすぐ燃えました。
ダークトーンは、光を集めやすい特性があります。
ビジネススーツのカラーは、白を含む明るいトーンは少なく、どちらかと言えば濃い色目が多くなっているのが、夏のスーツが暑い原因の一つです。
太陽光には、紫外線・可視光線・赤外線などが含まれますが、熱源になっているのは赤外線です。
「ICESENSE」には特殊な加工が施されていて、太陽光の中で赤外線と紫外線だけを反射させる効果を持っています。
その効果で表面温度を約8度程度も下げる事が可能で、体感に感じる温度は、それ以上に下がります。
可視光線は反射しないため、生地がピカピカ光ることは有りません。
強撚糸を使用して、しっかりと打ち込まれているため、美しいドレープが出て、清涼感に優れています。
「ICESENSE」の効果で、ダークトーンのビジネススーツでも、夏を快適に過ごすことが出来ます。
Super110'S
18.0ミクロンのSUPER110’sは、「レダ」が最も得意として力を入れている「看板」です。
自家牧場の管理された原料の中から、選りすぐられたものだけを紡績しています。
同じSUPER110’sなら、どれも同じという考え方は誤解です。
あくまで、数値的に表されるものなので、実際の中身は大きく異なります。
機会があれば、お店にある複数の他社SUPER110’sを触って比べれば、簡単に理解して頂けます。
「レダ」の「SUPER110’s」は、同じSUPER110’sの中でも極めて高い評価を、業界内でも着用するユーザーからも受けています。
美しい光沢感と、仕立てたときの凜とした佇まいが有り、素材の持つドレープ感の良さは、動いた時に出来るシワまで美しいと言われています。
スムーズな肌触りと上質で品の良い光沢感は、ジャストサイズのオーダースーツで活きます。
毎年、オーソドックスな定番柄から、ファンシーな柄までリリースされていて、選ぶ楽しみがあります。
メンズだけでなく、レディースにもオススメです。
まとめ
「レダ」は、毎年精力的に数多くのテキスタイルデザインを発表しています。
自社手配の原毛から生地最終仕上げまで、一元的に管理された「こだわり」品質は、一切の妥協を許しません。
そのことが、長年に渡る大きな信用に繋がっています。
「レダ」の生地に共通して感じられるのは、メリノウールに対して真摯に向き合うプライドです。
柔らかくしなやかな肌触りが生み出す着心地、美しい表情と艶が彩るデザインは、オーダースーツで仕立てる事で、その卓越した良さを享受出来ます。