最高峰の高級イタリア生地「クロス エルメネジルド ゼニア」の魅力は美しいドレープと着用感にあり!
「Ermenegildo Zegna」はエルメネジルド・ゼニアと読み、省略して「ゼニア」と呼ばれる事が多いブランドです。
1世紀以上もの間、テキスタイルブランドの王者に君臨し続けるブランドで、世界中のセレブ・ファッション好き・国家元首までを虜にしています。
どの国の有名仕立て屋に出向いても、「ゼニア」の生地は店の顔として存在感を示している事が多く、テーラーからの信頼も絶大です。
自社で既製品も扱っていますが、一流ブランドアパレルにも素材供給をしています。
「アルマーニ」「トムフォード」「エルメス」「ラルフローレン」等のブランドでも、「ゼニア」の本来持つ素材の良さを活かして、各社が個性を競っています。
「ゼニア」の人気は、その卓越した品質の高さと、それ以上に着用した時の装着感が絶品であることです。
積み重ねてきた歴史と伝統を確かに守りながら、それに奢ること無く、時代に合わせた革新に対しても柔軟に対応していくのも大きな魅力です。
同じ「ゼニア」ブランドを名乗っても、コンセプトによって多様なサブブランドを展開しています。
ブランドの歴史
ブランド名にもなっている、創業者のエルメネジルド・ゼニア氏が、1910年に北イタリアのトリヴェーロで創業しました。
創業当時から品質に強くこだわり、「世界で最も美しいファブリックをつくりだす」という理念は、今も変わっていません。
当時圧倒的なシェアを世界に誇っていた英国素材を抑えて、イタリア素材が台頭した原動力の一つは、間違いなく「ゼニア」が担っています。
今では当たり前になった、オーダーに使われる服地の耳(生地の両端)に、品質保証の証としたブランドネームの織り込みは、「ゼニア」が最初に行っています。
常に最高品質の羊毛を原産国から直接調達して、その中から更に厳選された原料を用いて、伝統的な製法で丹念に織り上げたファブリックは、イタリアが誇る最も有名な輸出品の一つになっています。
織物の基本知識
「ゼニア」の良さを理解するのに、役に立つ織物の基本的な知識を見ていきましょう。
素材としてのテキスタイル善し悪しは、多くの複合的な要素で構成されます。
基本として、「どれくらいの太さの糸」を、「どれくらいの密度」で、「どんな組織(織り方)」をするか?ということです。
糸の太さ
太い糸を使えれば、ザックリとしたテキスタイルに仕上がり、細い糸を使用すれば繊細な仕上がりになります。
スーツ地としては、主に2/48から2/80程度の糸番手が使われます。 数字が大きくなるほど細い糸を表します。 2/80のことを80双糸(そうし)と読みます。
羊毛は2本の糸を撚(よ)って(ねじり上げるイメージです)、織物に用いられます。
双糸にする事により、安定した均一な太さになるため、一般的なウール素材に使われています。
1本の糸を撚って使う、単糸使いの織物もあります。 1/30と表記して30単糸と読みます。
1/30と2/60は同じ太さになります。 双糸と比較して均一感が劣る事を逆手に取り、織物に表情を加える事に多く用いられます。
羊毛の原料グレード(繊細さ)によって、糸の太さに用いる事の出来る限度があります。
細番手の糸を製造するのには、原料の繊細さが必要になります。
当然原料が繊細ならば、コストは高くなります。
本来織物は芸術では無く営利目的で製造されるので、よりコストの安い羊毛原料を使用して、如何に細い糸を作成するかに力を集中します。
しかし上質な素材は、これらのセオリーを無視して製造されています。
本来であれば2/80番手の製造が可能な上質原料を用いて、2/48や2/60番手を製造にすることにより、「滑らかさ」「上質な手触り」を表現しています。
同じウールの生地でも、中国産を中心とした普及品とブランド生地の差は、このような違いがあります。
よく誤解されるのは、「super100’」や「super120’」を糸の細さと解説されている事です。
これらは原料の繊細さを表していて、糸の太さではありません。 中身は多くの差が存在していて、同じ「super100’」と表示されていても、個別に比較すれば大きな優劣が存在します。
数値的には同じ繊細さを持つ原料でも、羊毛本来の持つ「クリンプ」と呼ばれる縮れが、織物の仕上がり品質に大きな影響を与えます。
上質なクリンプを持つ原料は、弾力性に富み、優れた張りコシとシワからの回復力に繋がります。
上質なウールは、着用した後で適正にハンガーに掛けておけば、シワが自然に回復するのは「クリンプ」が大きな役割を果たしています。
密度
「打ち込み本数」と呼ばれています。
決められた範囲に、縦横どれくらいの糸が入っているのか?ということが、生地の仕上がりには、大きく影響します。
「打ち込み本数」は、少なければソフトになる反面、特にメンズでは必要な張りコシが無くなり、物性的な問題(縫い目から裂ける等)が出ます。
逆に「打ち込み本数」が多ければ、張りコシが出て物性的な問題も解決出来ますが、全体的には固くなってしまいます。
上質なブランド素材は、「打ち込み本数」が多くなっても、使う糸の上質さで固くなる事が無く、「張りコシ」がありながら、「しなやかさ」を出す事を両立させています。
「打ち込み本数」は、コストに直接反映されます。
「打ち込み本数」が多くなれば、同じメーター数を織り上げるのに時間が掛かるためです。
コストを考えれば、打ち込むスピードが速ければ速いほど、生産効率は上がります。
しかし、早いスピードで糸を飛ばせばテンションが掛かり、羊毛の持つ素晴らしい特性のクリンプが持つ効果は減少してしまいます。
上質なブランド素材は、生産効率が落ちてコストが上昇しても、クリンプ特性に最適なテンションに収まるスピードを選択することで、高い品質を生み出します。
織り組織
大きく分けて、「平織り」「綾織り」「繻子(しゅす)織り」があります。
平織りは、主に春夏に使われる清涼感が出る軽量な織物で、最も基本的な織り方であり、使っている糸の品質がダイレクトに出ます。 トロピカルウールと呼ばれます。
同じトロピカルウールでも、上質なブランド素材は、原料の良さと適正な「打ち込み本数」によって、中国を中心とした普及品とは確実に大きな差が出ます。
伝統的な春夏素材として、上質なブランド素材は「綾織り」を用いる事があります。
「綾織り」ではトロピカルウールと比較して、織物に重量が付くため、細番手の糸が使われます。 清涼感を持たせるため、撚糸回数を増加させた強撚糸を使う事もあります。
どちらの手段も、コストが掛かる手法です。
「綾織り」「繻子織り」は比較的重量を付けやすいため、主に秋冬素材として使われます。
コストを考えれば、太番手糸をシンプルな綾織りで仕上げる事で、秋冬の利用に使える生地には仕上がります。
上質なブランド素材は、敢えて品質の高い細番手糸を用いて、織り組織に変化を持たせることによって、秋冬の利用に使える重量感の構築をします。 上質な原料糸をたっぷり使うので、必然的にコストは高くなります。
ゼニア素材の特徴
「ゼニア」の特徴は、だれにでも解りやすい高級感です。
上質な羊毛は、天然素材だからこそ出せる「品の良い光沢」を持っています。
テキスタイルが商品として並んだ時に、圧倒的な存在感を放ち、着用した時には、会う人に「上質なスーツ」であることを一目で印象づけます。
この光沢感は、昨今増えているポリエステルが持つ光沢感とは根本的に異なり、天然原料から出ている上質な光沢感です。
「一度でも着てしまったら、もう他は着られない」 と、ユーザーに言わせるほど、リピーターが多いのも「ゼニア」の特徴です。
その良さを一言で言うと、見た目に反して感じる、着用した時の「軽さ」にあります。
しっとりとした滑らかな素材感は、そのまま「柔らかく」「しなやか」に身体に馴染み、着用する人を虜にします。
個々の身体にフィットしたジャストサイズのスーツは、スーツの見た目をグレードアップ出来る為、「ゼニア」のテキスタイルをオーダースーツに用いられる事で、幾重もの相乗効果が生まれます。
美しいシルエットが映えるドレープ感も、「ゼニア」の特徴の一つです。
羊毛にはピンからキリまでの等級があり、その中でも上質な部分だけの羊毛を使う事で、「ゼニア」の品質は保たれています。
最適な原料のチョイスから始まり、原料に最適な糸番手の紡績を行い、織物に応じた撚りを掛けて、低速のスピードで織り込み、時間をゆっくりと掛けた仕上げ整理工程まで、一貫して行うことで、極上の「ゼニア」品質は生み出されます。
秋冬のゼニア素材
エレクタ(ELECTA)
「エレクタ」は、ゼニアのレジェンドを担うポジションで、1929年に発表された当時と変わらないクオリティと色柄は、世界中のビジネスエリートの装いとして愛され続けています。
たまたま評判の良かったブランドを継続させているのではなく、「ELECTA」はスペイン語で「選出」を意味していて、当初から高い完成度を自負していたことが窺えます。
世界中の何処に行っても、失礼が無く気後れしない定番の良さがあり、イタリア素材特有の「しなやかさ」を持ちながら、イギリス風のしっかり感を持ち、仕立て映えします。
初めてのゼニア体験としても、その解りやすい品質から多くのユーザーに選ばれています。
張りコシが備わることで、スーツとしての定番的な品位が有るだけでなく、シワからの回復力に優れ、長期間に渡り愛用できることから、エグゼクティブビジネスマンの仕事着として最適です。
素材の特徴として、繊細な高級原料を惜しみなく打ち込んだ、しっかり感があります。
遠目で見ると一見無地に見えても、高級感のある深みを感じさせるのは、コスト高から現在では少なくなった、霜降り糸の杢使いにあります。
色目の違う糸を双糸にして使う事を、杢糸使いと言います。
上記の素材は、杢糸使いのヘアラインで、奥行きのある立体感を表現しています。
合理化という現在では重用される文言に背を向け、どこまでも愚直に品質を追求しています。
杢糸に使う糸を通常の双糸では無く、極細の糸を3本使って撚る「三つ杢」使いや、撚糸時に意図的に撚り数を変える「カベ撚り」を使う事で、どこかで見たことのある何気ない色柄に、表情と色気が吹き込まれます。
生地表面の表情は比較的ソリッドで、毛足が短く刈り込んであります。
高級感のある上品な艶が一層際立ち、解りやすい上質さを醸し出します。
ヘリテイジ(HERITAGE)
「ヘリテイジ」は、受け継いでいく遺産という意味の英語です。
創業者であるエルメネジルド・ゼニア氏が、こよなく愛したワードローブと、同社が保有する1930年代近辺の色柄・クオリティを基にして、当時の整理工程等までも大切にしながら、単に再現するだけでは無く、現代に即したアレンジが施されている人気シリーズです。
秋冬素材だけでなく、春夏素材も展開しています。
上質な原料を使った梳毛糸で、幅広に整経された状態から、時間を掛けて丁寧に縮絨(揉み込んでいく作業)を重ねる事により、高級感のある品の良い起毛感が楽しめます。
クラシカルな雰囲気が、現在のトレンドにマッチして人気です。
ループ(LOOP)
昨今よく耳にするキーワードとして、「SDGs」があります。
その中身は多様ですが中心にあるのが、サスティナブル(Sustainable)であり、sustain(持続する)にable(〜できる)が付いて、「持続可能な」という意味合いです。
「ループ」は2020年からスタートした、新しいzegnaの取り組みを象徴するブランドです。
循環を意味する「LOOP」は、サスティナブルを標榜しています。
Zegna社では、羊毛から最終仕上げまで自社で一貫して行っている中で、どれだけ厳密に計算しても、各工程で必ず出る廃棄していた余剰を製品にする事に取り組んでいます。
ループでは、原毛の余剰を再構築して生産されています。
余剰原毛とはいっても、あくまでzegnaの厳選された原料の再利用なので、高品質なのは折り紙付きで、過去には無かった組み合わせから生まれるクオリティを、比較的リーズナブルな価格で楽しむ事が出来ます。
オーソドックスな定番柄が中心で、年齢を問わず着用出来ます。
控えめながらも、しっとりとした光沢感を持ち、ゼニアの高品質は健在で、従来からのゼニア愛好者を決して裏切りません。
春夏のゼニア素材
クールエフェクト(COOL EFFECT)
2010年に登場した「クールエフェクト」は、既に夏のスーツ地として、定番になっています。
男性のビジネススーツカラーは、落ち着いたダークトーンが重用されますが、夏場は濃いカラーほど太陽光を吸収するため、着用時には暑くなる事が避けられません。
夏のダークスーツ素材として、ライトトーンと遜色の無い、表面温度を10℃近く低く抑える加工技術を確立しました。
糸の段階と仕上げの段階で特殊な加工をすることで、照りつける夏の太陽光を反射して、通気性の高く表情がある強撚糸を使用する事で、暑い時期にも不変のダンディズムを演出します。
もう一つの従来からある春夏素材の定番「トロピカル」と比較すると、色柄に特徴のあるタイプが揃っています。
機能素材は、昨今ポリエステルが中心になっていますが、天然素材のウールの上質さを失うこと無く、機能素材でありながら、本来のzegnaクオリティと変わらない事に、徹底的に拘っています。
上質極細原料による通気性と併せて、「COOL EFFECT」で快適な夏を過ごせます。
トラベラー(TRAVELLER)
豊富なラインナップを誇る「ゼニア」の中でも、「TRAVELER」は高い人気が有ります。
トラベラーは旅行者という意味ですが、ウール本来が持つ「クリンプ」による回復力を最大限に引き出すことにより、高いシワ回復能力が有ります。
一晩寝かせることによって回復する能力だけでなく、高い質感を持っています。
回復力を高めるために、上質な原料を用いた糸を強撚糸にしていますが、それによって出る独特の品の良い艶も人気の秘密です。
強撚糸特有の立体感と清涼感が有り、多忙な出張先でも変わらない、エレガントさを持続するタフさを持ち合わせています。
トロピカル(TROPICAL)
春夏素材では不動の定番が「トロピカル」です。
織り方では、最も重量が付かない「平織」組織のウール生地を、「トロピカルウール」と言います。
一般的にあるトロピカルウールは、黒や紺などの無地が圧倒的に多く、春夏用のブレザーやリクルートスーツなどの多くに用いられています。 (最近ではウール100%の商品は、限られた高額品だけになっていますが)
ゼニアのトロピカルウールは、従来からあるトロピカルウールのイメージとは、大きく異なります。
糸の撚り方向を変える事と、霜降り糸を使い分ける事で、平坦になりがちな平織に、豊かな表情を加えています。
主張のある色柄は、トロピカルから派生した「クールエフェクト」に譲って、従来からある定番柄に磨きを掛けています。
軽く通気性に優れる清涼感がある織物ですが、ペラペラ感が無く仕立て映えするのはゼニアならでは。
トロピカル ジャスペ(TROPICAL JASPE)
ちょっと聞き慣れない「JASPE」とは、フランス語で「碧玉(へきぎょく)」のことです。
碧玉とは、繊細な石英の結晶が固まって出来た、鉱物の一種である宝石です。
碧玉には緑や赤、黄色などもありますが、日本ではブルーサファイアを指すケースも有ります。
碧玉がカラーを問わずに共通しているのは、同系色に見えても様々な色が内包されている中で見せる、深みのある佇まいです。
従来のトロピカルを更に一歩進めた上級バージョンとして、「トロピカル ジャスペ」があります。
清涼感があり、仕立て映えのする従来のトロピカルの良さはそのままで、霜降り原料で作成された多様なトーンを、別のトーンと撚糸する杢糸使いがメインで、撚糸回数を詳細にコントロールすることで生まれる表情の変化を、織り柄の中で積極的に利用しています。
本来なら高級感を出しにくい平織組織で、群を抜く質感を実現しています。
まとめ
揺るぎない伝統と格式を継承しながらも、今日もゼニアは前へ進む歩みを止めません。
本物を守り抜く矜持と、革新が共存する希有な織物は、圧倒的な質感でセレブを魅了し続けています。
ゼニアの良さは、文字だけでは到底お伝えできません。
是非、店頭でご覧になって、実際に手に取って下さい。 きっとご納得頂けると思います。
しかし、ゼニアの本当の良さは、仕立て上がったジャストサイズのスーツを纏ったときに、過去に経験したことの無い、しなやかな着用感をもって完結します。
究極という言葉が、最もふさわしい素材「zegna」 長期間に渡って愛用の一着になる逸品です。