リネンスーツの着こなし方や特徴を紹介。お手入れ方法も解説します
目次
スーツは天然素材に限る!という方でも、実際に入手するのはウールに限定されていませんか?
リネンは夏のイメージが強く、着用期間が短いからと敬遠される方が多い様ですが、春の終わり頃から秋口まで着ることが出来るので汎用性は決して低くありません。
リネンスーツは、素材感があることから単品としても着回しが可能です。
他のシーズンとは明らかに違う季節感ある素材で、シワの味わいを楽しみ、自分だけの一着に育てていくのは、きっと人生を趣深くしてくれます。
リネンスーツの特徴やメリット・デメリットから、コーディネートまで解説いたします。
リネンスーツとは?
リネンスーツは、リネン素材を使ったスーツです。
リネン100%のスーツもあれば、リネンを他の素材と組み合わせたスーツもあります。
麻の種類について
リネンとは、麻のことです。植物の茎の靭皮部分から採られる植物繊維で、セルロースが主成分です。
麻は主に綿以外の植物繊維の総称とされていて、その総数は60以上あると言われています。
実際に洋服で使われる麻の種類は、主に以下の3種類です。
リネン
日本名は亜麻(あま)です。日本の洋服マーケットでは、現在最も多い麻の種類です。
麻の中では光沢感が比較的抑えめで、「しなやか」さが持ち味です。
中心産地はヨーロッパです。
ラミー
日本名は苧麻(ちょま)です。強度が強く、光沢感があります。
糸自体に毛羽が多く、シワ感も強く出ます。
中心産地はアジア圏と南米です。
ヘンプ
日本名は大麻(たいま)です。名前を聞いて、ギョッとした方もいらっしゃるかと思いますが、麻薬と同じ大麻です。
日本産の大麻には麻薬成分は基本的に無く、古くから日本文化の中に馴染んでいます。
注連縄(しめなわ)等に使われていて、法隆寺にある日本最古の印刷物とされている、「百万塔陀羅尼」は、大麻紙に印刷されています。
現在日本産は少なく、ヨーロッパ産が大半です。
ネップ(繊維が絡み合い塊になって糸に付着したもの)が入り込み易く、スラブ(節ムラ)が発生しやすい反面、独特の風合い感があります。
夏用の着物として使われます。空気を多く含み余分な湿気を蒸散させる特性を持っています。
日本のルールでは、製品混率表示でヘンプは麻にはならず、指定外繊維(ヘンプ)になります。
リネンスーツは、ウール以外の双璧コットンスーツに比べると、クラッシックな印象があります。
ウールのスーツと比較して、季節感のある涼しげな雰囲気が容易に構築出来ます。
夏場のカジュアルオフィススタイルにも、テーラード仕立てのリネンなら難なく馴染みます。
リネンの特徴
リネンの特徴として、天然素材だからこその優れた吸水力・発散性があります。
夏の日差しを防いで、さらっとした肌触りがやさしい夏素材の定番です。
汚れが落としやすい特性を持ち、着用時間の経過とともに「こなれた」柔らかさが増して、使い込むことにより味が増す、エイジングが楽しめます。
リネンのメリット
リネンが持つ質感は、トレンド的にも注目されています。
しっとりとした艶が彩る、経年変化で馴染む自分だけの一着になっていく事を楽しむ、大人の粋が大きなメリットです。クラッシックなイメージの中にもリラックス出来るイメージをもたらします。
見逃せないのは、夏素材としての機能です。
リネンに含まれるペクチンという成分には、汚れを染みこみにくくする性質があり抗菌性も確認されていて、消臭効果も持ち合わせています。
肌に触れた時に、熱伝導性が高く「ひんやり」と感じます。
繊維が強靱なので、密度の粗い織りでも物性強度が確保できるため、風通しが良く清涼感があります。
汗や湿気に対して吸収力があるリネンは、機能的なスーツ素材と言えます。
リネンのデメリット
リネンは素材自体に伸縮性がありません。
そのため、シワになりやすい特性があります。
これが最大のデメリットで、シワが理由でリネンを敬遠する方も多いと思います。
長期間着用する事で、自分の身体に合ったシワと毛羽立ち等のエイジングを楽しむなら、それはメリットになります。
他の素材を組み合わせた素材を選択して、麻の魅力や特性を享受しながらシワ問題のデメリットを解決している生地もあります。
ウールと組み合わせたリネンなら、シワは目立ちすぎません。
清涼感があって軽さがあり、リネンのシャリ感を持ちながらウールのしなやかさが出ます。
ビジネスシーンにも充分対応が可能になり、お手入れも楽になります。
ポリウレタンとリネンを組み合わせれば、伸縮性が出てシワになりにくくなります。
合繊素材に新しいプリント技術を使って、麻の素材感を表情で出しながら、シワが寄りにくく吸汗速乾の高機能新素材もあります。
シーンごとの着こなし方
リネンが活躍する季節は、言うまでも無く夏です。
暑い時期を快適に過ごせるリネンは、オンビジネスにも大人のカジュアルにも対応できます。
しかし、真夏だけでは無く春先からリネンは活躍するアイテムです。
シーズンごとに着こなし方を考えてみましょう。
リネン素材のスーツを合わせる
素材感にクラッシック感があるリネンをテーラードで仕立てることで、絶妙にドレスダウンする事が出来ます。
リネンスーツは、ノーネクタイやポロシャツをインナーに着用しても、砕けすぎる事が無く、クールビズ・オフィスカジュアルに最適です。
リネンスーツ春の着こなし
カラーは、比較的濃い色がベターです。
リネンの贅沢な味わいを堪能するのに、三つ揃いのスリーピースは如何でしょうか?
素材感があるので、シンプルなコーディネートにするのがポイントです。
たとえば、紺のリネンスーツ(スリーピース)に白のワイシャツを合わせて、近などの同系色無地のネクタイを締めます。
白のポケットチーフを挿せば完璧です。
紺の色はウールスーツにある濃紺でも良いですが、リネンの淡く柔らかい雰囲気とマッチする、若干明るめのネイビーもオススメしますよ。
リネンは品の良い光沢がある事で、光源や環境によって明るさが変化します。
屋内室内ではより深いネイビーになり、外の自然光の下では明るく涼しげな印象になります。
グリーン系は春先から秋口まで対応出来るお洒落カラーです。
茶系のネクタイは相性抜群で、同系色のチーフを挿せばカッコイイ着こなしですね。
リネン素材のスーツに見えますが、リネンは使っていません。
リネンに見える新世代のプリント技術を使っているので、シワの心配も不要です。
オフにもリネンスーツは活用出来ます。
たとえばネイビー系のリネンスーツに、グレー系パーカーと白スニーカーを合わせます。
砕けた感じながら、しっかり感がある大人のカジュアルになります。
リネンスーツ夏の着こなし
カラーは麻らしいネイビー系・ベージュ系、清涼感のある薄いトーンがベターです。
「TPO」によって、コーデの変化を楽しみましょう。
「きっちり感」が必要な場合には、シャツにネクタイを締めればOKです。
たとえば、ネイビー系のリネンスーツに、インナーのシャツはブルー系ギンガムチェックを合わせます。
ネクタイはニットタイがオススメです。
無地でもOKですが、ワンポイントのカラーをボーダーに持ってくるとお洒落度が上がります。
麻混のざっくりしたネクタイも、涼しげで良いですね。
ベージュ系のリネンスーツなら、爽やかなブルー系シャンブレーシャツの組み合わせに、ニットタイのコーディネートは如何でしょうか?
ニットタイは先述のネイビー系と同様にワンポイントのカラーを持ってくるとお洒落です。
靴とベルト・鞄は黒系で全体を締めると無難にまとまります。
イタリアン系に振るなら、茶系で揃えるのもカッコイイですね。
ポロシャツを組み合わせれば、クールビズなコーディネートが、お洒落にきまります。
夏のパーティーには、シルクネクタイを締める事で雰囲気が出ます。チーフも忘れずに。
「お洒落ビジネスカジュアル」クールビズにも活用出来ます。ノーネクタイが基本ですね。
たとえば、ネイビー系のリネンスーツなら、ホワイトの麻シャツで涼しげなビジネスカジュアルになります。
ドレスコードが許されるなら、白のポロシャツも良いですね。
上質なクールビズが体現出来ます。
鞄と靴には、ネイビー系と相性が良いグレーを持ってくると、全体の統一感があるカラーコーディネートになります。
インナーにカットソーを組み合わせて白い革靴やサンダル、スニーカーと組み合わせれば大人リゾートカジュアルです。
ベージュ系のリネンスーツでは、白のカットソー・白の半袖シャツは如何でしょうか?素材感を邪魔しないシンプルな大人のコーディネートになります。
鞄と靴は茶系でOKですが、グレー系や白もお洒落ですね。
イタリア系コーデなら、アズーロ・エ・マローネを意識するのも面白いですよ。
アズーロ・エ・マローネとは、「青と栗色(茶)」のカラーの組み合わせです。
茶系のリネンスーツに青系のインナーと靴を合わせます。
伊達な大人の休日カジュアルです。
本切羽で腕まくりして、裏地でもさりげなくアズーロ・エ・マローネの主張がお洒落です。
オーダースーツの良さが溢れています。
リネン素材のジャケットを合わせる
リネンスーツは上下揃いのスーツとしてだけでなく、バラして単品使用が出来るのも大きなメリットです。素材の持ち味をそのまま活かして、ラフな着こなしのデニムパンツを組み合わせて、オフのドレスダウンアイテムとして有効です。
綿のスラックスを合わせて、リネンのジャケットにネクタイを締める事で、ビジネスの「きちんと感」コーディネートも可能です。
リネンジャケット春の着こなし
春のリネンジャケットを使うジャケットスラックスコーディネートの基本は、淡い色と濃い目カラーのコントラストをつくります。
たとえば、ネイビー系のリネンジャケットに、サックスのシャンブレーシャツとスリムなベージュ系スラックスの組み合わせで、オフィスカジュアルコーディネートが完成します。
ベージュ系リネンジャケットに、淡い色目のネイビー系シャツと、濃い目ネイビーのスラックスの組み合わせは如何でしょうか?
襟元のすっきり感を出すには襟の開いたホリゾンタル襟が良いですね。
襟が白色になっているクレリック襟も良いです。
ノーネクタイでも「すっきり」まとまって、だらしない感じがしません。
グリーン系のリネンジャケットに、ブルー系のガンクラブチェックのパンツを合わせて、グレー系ホリゾンタル襟シャツを組み合わせます。
リネンルックの光沢感を濃淡でフォローするお洒落コーデです。
リネンジャケット夏の着こなし
夏のリネンジャケットは、白とのコンビネーションで夏の雰囲気を楽しみます。
ベージュ系のリネンジャケットに、グレー系や白黒ストライプシャツを組み合わせて、スラックスは白をチョイスします。
シャツはクレリックで襟元にも白を持ってくると、お洒落度が増します。
赤茶系のベルトと靴を揃えれば、大人カジュアルが完成します。
インナーには黒のニットやポロシャツでも良いですね。
リネンは表情が豊かなので、テーラード仕立てのジャケットに短パンを組み合わせても違和感無くお洒落に着こなせます。
コントラストのメリハリを付けるグレー系のパンツにボーダーニットを組み合わせ、ストローハットを装着すれば完璧です。
正しいお手入れの方法
リネンは完全に乾いてしまうと、シワが定着して取りにくくなる特性があります。
アイロンを掛ける時にシワが強い場合は、さらに上から霧吹きで水分を与えて湿気を与えながら、高めの温度設定で行います。
色あせが起こりやすいので、シーズンを跨ぐなど長期保管する場合は、光の当たらない場所に保管してください。
畳んで収納すると、シワやアタリ(テカったり色抜けすることです)が出る恐れがあるため、ハンガーに吊してください。
リネンスーツで良くあるQ&A
よくある質問をまとめてみます。
カジュアルなスーツ(麻や綿素材)はオーダーできますか?
オーダースーツはウールだけではありません。
麻・綿・コーデュロイなどカジュアル生地を使って、カジュアルスーツのオーダーを受け付けています。
リネンスーツにチーフを使うのはどうですか?
相性は抜群です。
ワンポイントのアクセントとして、積極的に使いましょう!
麻のポケットチーフなら、清涼感が増して相性もベストです。
コーディネートは、シンプルにシャツと同系色で合わせると良いですね。
冬にリネンスーツを着てもいいですか?
駄目ではありませんが、清涼感たっぷりの明るいカラーや、ザックリとした密度の粗いタイプ・薄手のタイプは避けた方が無難です。
しかし、目の詰まった厚手での濃いカラー生地、裏地が総裏仕様になっているものでしたら違和感無く着用できますよ。
リネンの特性として空気を多く含むので保温性も期待出来ますし、ウールなどと組み合わせて起毛加工をしている秋冬タイプもあります。
リネン=夏と限定は出来ません。
お気に入りのリネンスーツ、上記の事を考慮すれば冬でも大丈夫です。
自信を持って着てください
まとめ
高温多湿な日本の夏期気候には、清涼感のあるリネンスーツはとても快適なアイテムです。
クールビズに何を着たらわからないという方なら特に、リネンスーツをワードローブに1着加えてみてはどうでしょう?
ビジネスカジュアルスーツとしてだけでなく、単品ジャケット・単品パンツとしても使い回しがきいて、オフにも使える便利アイテムです。
リネンスーツは、エイジングで自分だけの一着に育てる楽しみもあります。
オーダースーツで好みを存分に入れて、サイズもぴったりな一着なら愛着が湧いて、育てる楽しみも倍増すること間違い無しですね。